新型コロナウイルスの感染拡大を防止すべく、世界最高峰のエンターテインメント、NBAは3月13日(現地時間12日、日付は以下同)より2019−20レギュラーシーズンを中断することを余儀なくされた。6月に入り、7月31日からフロリダ州オーランドで22チームが参戦し、シーズンを再開することが決まった中、65試合前後を消化した各チームならびにその主要選手たちを振り返っていきたい。
※データは日本時間3月12日終了時点、%=パーセント、評価は上から順にS、A、B、C、D、Eの6段階

◆2019−20シーズンNBA通信簿選手編⑳クリス・ポール

所属:オクラホマシティ・サンダー(ウェスタン・カンファレンス5位)
総合評価:S

■プロフィール
生年月日(年齢):1985年5月6日生まれ(35歳)
ポジション:ガード
身長/体重:185センチ/79キロ
NBAキャリア:15年目
  
<今季ここまでの功績>
オールスター選出(4年ぶり10度目)

<2019−20シーズン 個人成績>
平均出場時間:31.8分
平均得点:17.7得点
平均リバウンド:4.9本
平均アシスト:6.8本(リーグ16位)
平均スティール:1.6本(リーグ12位)
平均ブロック:0.1本
フィールドゴール成功率:48.9%
3ポイント成功率:36.2%
フリースロー成功率:90.0%(リーグ6位)

■主要項目におけるシーズンハイ(相手チーム名は略称)
出場時間:38分28秒(19年11月16日/対シクサーズ)
得点:31得点(20年2月12日/対スパーズ)
リバウンド:11本(19年12月30日/対ラプターズ)
アシスト:12本(3度)
スティール:4本(5度)
ブロック:3本(19年12月12日/対キングス)★
フィ―ルドゴール成功数:12本(20年2月12日/対スパーズ)
3ポイント成功数:6本(19年12月17日/対ブルズ)★(キャリアハイタイ)
フリースロー成功数:12本(19年11月16日/対シクサーズ)
★=キャリアハイ

◆絶大なリーダーシップを発揮し、4年ぶりにオールスターへ返り咲く

 昨年7月17日。ポールは突如ヒューストン・ロケッツからサンダーへのトレードが成立し、移籍することとなった。12月上旬に応じた『The Undefeated』とのインタビューで、ポールはダリル・モーリーGM(ゼネラルマネージャー)とのやり取りについてこう振り返っている。

「(トレードは)ショックだった。正直に言ってほしかったんだ。俺はトレードの2、3日前にダリルと話して、彼は『君をトレードするつもりはない』と言ってくれた。でもトレードは実現してしまったのさ」。

 トレードされた当初。サンダーは若手を中心に再建へと乗り出しており、ポールは今季開幕前に再びトレードされるのでは、というウワサも渦巻いていたのだが、ポールはサンダーでプレーする決意を固めた。

「俺はここに来ることができていい気分だ。ボールをもっとたくさん動かす機会を得たんだからね。どこでプレーしようと、どんなシステムであろうと構わない。俺はアジャストしてみせるよ」。

 ポールは昨年10月に地元メディア『The Oklahoman』へそう話し、ベテランとしてサンダーを勝利へと導くべく、開幕を迎えた。

 サンダーは序盤の5試合で1勝4敗と苦しんだものの、11月下旬から徐々に白星先行へと一転。特に12月中旬からポール、シェイ・ギルジャス・アレキサンダー、デニス・シュルーダーという3人のポイントガードを同時にコートへ送り出す起用法が奏功。

 身長の面でミスマッチが生じてしまうものの、ポールは全く意に介していなかった。

「俺たちはディフェンス面で、それぞれ異なった能力を持っている。シャイは長さ、デニスはしつこさで相手につきまとう。それに俺とデニスは、誰をガードするかで争うくらいなんだ。例えば、俺がルカ(ドンチッチ/ダラス・マーベリックス)をガードしていたら、デニスが『俺もガードしたい』と言ってくるみたいにね。つまり、俺たちは皆それぞれが違うアドバンテージをもたらすことができるんだ」と『The Athletic』へ話している。

 その中で、サンダーの予想外の快進撃をリードしていたのはやはりポールだった。

「クリスは7月にこのチームへやって来て、4日間を過ごしたんだ。そこでチームメートたちとも時間を過ごし、ディナーにも行っていた。彼は若手選手たちにとってすばらしい存在だ。特に感心するのはプロフェッショナリズムだね。34歳の男は朝8時30分に来て、身体のケアをして身体にいいものを食べている。彼は本当に人々を惹きつける人間だから、すばらしいチームにしてくれている」とビリー・ドノバンHC(ヘッドコーチ)が話したように、苦戦必至と思われていたサンダーをプレーオフ出場圏内へと引き上げた。

 4年ぶりに返り咲いたオールスターでも、ポールは貫録のパフォーマンスで大活躍。25分31秒のプレータイムで23得点6アシスト。フィールドゴール13投中8本(うち3ポイントは11投中7本)を成功。出場時間帯における得失点差では両チームトップの+13を記録するなど、ベテランとして強烈なインパクトを放っていたと言っていいだろう。

◆シーズン中断期間は選手会会長として大活躍
「本当に特別で、心から互いのことが大好きな」チームで第二幕へ臨む

 今季のポールは司令塔として若手とベテランがブレンドされたサンダーのロースターを巧みに操り、ギルジャス・アレキサンダーの急成長を促した最大の功労者でもある。自身はベテランならではのボールフェイクやショルダー、ヘッドフェイクなどを巧みに使い分けてレイアップやジャンパー、3ポイントで高得点を奪取。

 ここまで2ポイントのジャンパー(53.2%)、2ポイントのプルアップジャンパー(53.9%)でそれぞれリーグトップの成功率を残しているほか、ブロックされた割合も1.1%でリーグ2位と、高精度なショットが光る。サンダーが第3クォーター終了時に劣勢だった試合で第4クォーターに逆転し、リーグトップの16勝を挙げているのはポールの活躍があったからにほかならない。

 シーズン中断後はNBA選手会(NBPA)の会長としてリーダーシップを発揮。4月下旬にはメディアとの電話対談で「皆さんに知っていてほしいのは、『さぁ、2週間でシーズンを再開させるぞ。それじゃあ始めようか』と言われても、そうはならないということ。我々、選手会は選手たちを以前よりもケガのリスクが高まる状況には置きたくないんだ」と選手たちの気持ちを代弁するかのように振る舞った。

 5月中旬には「バスケットボールは俺たちの一部。だから誰よりもリーグが再開してほしいと思ってる。この自粛期間によって、これまで異常と思われていたことが普通になるかもしれない。何もないよりは、プレーしている姿を見せられるのは良いと思うけどね」と『People』へ話しており、プレーしたい気持ちが日に日に増していることを明かした。

 6月上旬に7月末からオーランドで第二幕が行われることが決まり、現在ポールはサンダーのチームメートやコーチングスタッフたちとチーム練習をこなしている。

「俺たちは本当に特別なチーム。心から互いのことが大好きなんだ。こうしてまたコートに出て一緒にプレーできて爽やかな気分にさせてくれたよ」と、ポールは今季のチームを高く評価。

 中断前に見せていたディフェンスの再構築についても、ポールは「身体能力や背の高さではなく、ゲームから学び、何度も観ることによって得た知識で何が起こるかをコントロールするんだ」と語るなど、“ポイントゴッド”という異名のとおり、絶大な存在感を見せている。

 サンダーはシュルーダーが第二子誕生のためチームを離脱。8月中旬に復帰予定のため、8試合のシーディングゲーム(順位決定戦)を全て欠場するかもしれない。それでも、ポールは「俺たちは1人のチームじゃない。このチームには、周りの人たちが思ってるよりもずっと高い能力を持った選手たちがいるんだ。それを見るのがまた楽しいのさ」と揺るぎない自信を見せていた。

 ポールを中心に絶妙なケミストリーでプレーオフ出場を決めたサンダー。シーディングゲームでも厳しい戦いが続くだろうが、チームのオフェンスが停滞している時には、ポールが危険なスコアラーと化して流れを引き寄せ、勝利へと導くことだろう。