光と影、天と地、栄光と転落。世の中は表裏一体で成り立っている。それはNBAのオフシーズンの動向にも同様のことが言え、全30球団のなかには勝者と敗者が存在する。

 しかし、偏に勝者と言っても、それは来季の優勝候補に名乗りを上げることだけではない。低迷期や迷走から一変、将来に明るい兆しが見えれば、それは成功の一種にカテゴライズできる。本稿では『HoopsHype』が厳選した数ある球団より、将来性を感じるチームを一部ピックアップする。

◆ワシントン・ウィザーズ

 八村塁を擁するウィザーズが、オフの成功者であることに疑いの余地はない。高額なサラリーが大きな足枷になっていたジョン・ウォールをラッセル・ウェストブックとトレードし、そのウェストブルックをスペンサー・ディンウィディと3人のレイカーズ戦士(カイル・クーズマ、モントレズ・ハレル、ケンテイビアス・コールドウェル・ポープ)へ換金することに成功。不動のエース、ブラッドリー・ビールのパートナーとしてプレーオフ復帰の原動力となったウェストブルックの放出は簡単な決断ではなかったはずだが、ここ数年、ウィザーズフロントの悩みの種であったサラリーキャップの改善は、大きな成果に値する。

 また、バックコート陣の充実には目を見張るものがある。もし、ロスターの健康状態が保てれば、八村やクーズマをスモールフォワードとしてプレーさせるというオプションも生まれ、指導者キャリア初のヘッドコーチを経験するウェス・アンセルド・ジュニアにとっては早速うれしい悩みが生まれた。

 無論、ローテーションプレーヤーを豊富な手札にしている点もいい。パッケージとしてよりチームにフィットする選手とトレードすることもできれば、ドラフト指名権と交換することも可能。久しぶりにキャップシートに余裕ができたウィザーズは、NBAでも屈指の可能性を秘めたチームだろう。

◆メンフィス・グリズリーズ

 ここ数シーズン、渡邊雄太の古巣は下馬評以上の成績を残している球団のひとつだ。ジャ・モラント、ジャレン・ジャクソン・ジュニアをドラフト高順位で獲得しながらも、昨年はゴールデンステイト・ウォリアーズを撃破し、4年ぶりにプレーオフへと進出。しかし、球団はその成功に浮き足立つことなく辛抱を続け、計画的に任務を遂行した。

 グリズリーズはこの夏、ヨナス・バランチュナス、グレイソン・アレンと決別。両選手は契約最終年で、翌年に高額な契約延長の可能性があり、2022年のFAが豊作なことやジャレン・ジャクソンが契約更新を控えていることを考慮すると、サラリーキャップに柔軟性を持たせる上ではクレバーな決断だったと言える。その穴埋めにも抜かりなく、ドラフトでは5つ星のコンボフォワードであるザイール・ウィリアムズのほか、経験豊富で安定感のあるスティーブン・アダムス、スペイン期待のビッグマンであるサンティ・アルダマをロスターに迎えている。

 モラントは将来的なオールスター入りが確実視されているタレントであり、ディロン・ブルックスは成長著しく、デズモンド・ベインもオールルーキー2ndチームに選出された。若き指揮官テイラー・ジェンキンスのシナリオは、着々と実現に近付いている。

◆シカゴ・ブルズ

 古豪は現在実現可能な最高のチームを作り上げる姿勢を明確に、今夏もっとも積極的な動きを見せた球団だ。その対価として将来の柔軟性やドラフト指名権を失ったのは明白だが、次のオフにザック・ラビーンと再契約するためには必要な犠牲だったのかもしれない。

 シーズン途中、リーグトップクラスのセンター、ニコラ・ブーチェビッチを迎えたブルズは、今季のオフにサイン&トレードでロンゾ・ボールと4年8500万ドル(約92億6500万円)の高額契約を締結。また、ブーチェビッチと大学時代(USC)のチームメートであるデマー・デローザンの獲得にも成功し、バックコートの破壊力と効率性の良さは一躍リーグトップクラスに跳ね上がった。また、あのレブロン・ジェームズも絶賛したアレックス・カルーソや爆発力のあるコービー・ホワイトがシックスマンに控えており、この名簿を見る限り、楽に白星をつかめるチームは多くないだろう。

 重複になるが、ブルズの将来性を示すのは、ラビーンとの再契約だ。しかし、ポートランド・トレイルブレイザーズとは裏腹に、即戦力となるキーピースを用意し、エースへの信頼を示したフロントの仕事は非常に高く評価できる。あとは、結果を残すだけ。強いブルズが帰ってくることに期待したい。

文=Meiji