◆フィリピン代表経験者が8選手

 アジア特別枠が導入されて2シーズン目。今季はアジア特別枠の対象5カ国(フィリピン、韓国、中国、台湾、インドネシア)から12名が参戦する。注目はバスケ熱が盛んなフィリピンから代表歴のある有望選手が8人もやって来ることだ。中でも即戦力として期待されるのが、キーファー・ラベナ(滋賀レイクスターズ)とレイ・パークスジュニア(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)の2人だ。

 弟のサーディ(三遠ネオフェニックス)に続いて日本にやって来たのは兄のキーファー。以前より海外挑戦を熱望しており、アンダーカテゴリー世代から大学、PBA(フィリピンプロリーグ)と着実に実績を残している選手。SNSのフォロワー数では、ツイッター75.6万人、インスタグラム36.2万人を誇るフィリピンのビッグネームだ。また、ジョーダンブランドと契約しているアジア3選手のうちの一人でもある(他の2人は八村塁とグオ・アイルン/中国)。

 フィリピンは最下位に終わった2019年のワールドカップ以後は世代交代を進めており、2020年2月開催のアジアカップ予選では、新生フィリピン代表のキャプテンに任命されている。2023年ワールドカップにおいて、リーダー格となる選手と言えるだろう。

 レイ・パークスジュニアはサウスポーから放たれる3ポイントを得意とするシューティングガード。アメリカ国籍の父、ボビーパークス(故人)は1984年NBAドラフト58位で指名を受けている。その血を受け継いだ息子のレイもNCAAの名門ジョージア工科大学に一度はコミットした実力を持つ。

 しかしNCAAではプレーすることなく、Gリーグのテキサス・レジェンズやアセアンリーグ(東南アジアを主体としたリーグ/ABL)を経てPBAでプレーする経歴を歩んできた。2020年のフィリピンカップではチームを準優勝に導く活躍を見せ、平均39.7分22.4得点7.8リバウンド3.1アシストというオールラウンドなスタッツを叩き出している(PBAは48分ゲーム/フィリピンカップはフィリピン国籍選手のみで行う大会)。フィリピン代表としては、2016年オリンピック最終予選に名を連ねている。

◆フィリピンの若きビッグネームもBリーグへ

 フィリピン期待の若手、コービー・パラス(新潟アルビレックスBB)とドワイト・ラモス(富山グラウジーズ)にも注目だ。ともにNCAAディビジョン1とディビジョン2の大学でプレーした経験を持つ。最終的には自身が適応する環境を求めてフィリピンの大学に転校しているが、2020年以降は新型コロナウイルスの影響でUAAP(フィリピン大学体育協会)のシーズンが延期していることもあり、プロ転向に踏み切った。転校によるレッドシャツの期間や登録上の関係から、パラスはあと2年、ラモスは1年の資格を残して大学を去ることになった。
 
 198センチのサイズを持つコービー・パラスは2015年にU18 3x3ワールドカップのダンクコンテストにて、驚くべき跳躍力を披露して優勝。NCAAの名門UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)にコミットしたことからも「フィリピンバスケ界の未来」として脚光を浴びてきた(のちにコミットを解除してクレイトン大学へ進学)。NCAAでは適応できずに苦労の連続だったが、フィリピン大学で自身のプレーを取り戻したことで、Bリーグで新たな一歩を踏み出そうとしている。

 ドワイト・ラモスはボールハンドラーとウイングをこなす若手代表のエース格。2019−2020シーズン途中よりアテネオ・デ・マニラ大学に編入したものの、コロナ禍によってシーズンがキャンセルされたことから、UAAPの公式戦には一度も出場していない。その間、若手代表チームに招集され、アテネオ・デ・マニラ大と代表ヘッドコーチを兼任する知将、タブ・ボールドウィンのもとで鍛えられて成長を遂げた。今年6月のアジアカップ予選の3試合では、平均13.8得点6.2リバウンド2.2アシストと万能なスタッツを記録。主力が数人欠けていた布陣だったとはいえ、韓国に2連勝する原動力として一躍クローズアップされた選手だ。

 2人ともポテンシャルの高さは計り知れず、Bリーグで才能が開花する可能性もある。ただ、ともにこの2年は代表活動以外には実戦の場が少なく、チームへの合流時期も遅いために即戦力となれるかは未知数。まずは環境に適応しながら成長していくことが求められる。

 この2人と同様の状況に置かれているのが、兄ハビエル(茨城ロボッツ)と弟フアン(アースフレンズ東京Z)のゴメス・デ・リアニョ兄弟である。2人は2020年の夏に揃って所属するフィリピン大でのUAAPシーズンをスキップすると表明し、若手育成の場となった代表活動に専念(結果的に2020年のUPPAはコロナ禍によってキャンセルとなった)。アジアカップ予選はともに3試合出場している。

 フィリピンの有望若手たちがBリーグに進出する背景から見えることは大きく2点ある。一つは新型コロナウイルスの影響により、大学の活動に先行きが見えないことや、バブル開催のPBAでさえ延期や中止を繰り返している現状において、若手選手たちは成長の機会を失うことへの危機感を持っていること。2つ目はBリーグとのサラリーの格差だ。PBAのサラリーは新人で月額上限が20万ペソ(約44万円)、トップレベルの選手で月額上限が42万ペソ(約92万円)と発表されていることからも、海外進出に野望を抱くことは理解できよう(2021年夏には、新人ドラフト上位3名のサラリーを引き上げることが発表されている)。

◆韓国、中国、台湾、インドネシアからも参戦

 2023年ワールドカップ共催国となるインドネシアからやって来たブランドン・ジャワト(宇都宮ブレックス)も興味深い存在だ。NCAAディビジョン1のハワイ大学でプレーしたのち、インドネシアとアセアンリーグで活動。代表歴はアジアカップ予選の1試合のみだが、来年に母国で開催されるアジアカップではエースとしての活躍が期待されている。宇都宮にとって、フィジカルが強いウイングの補強は好材料。ディフェンス面で適応するかがカギを握る。

 チャイニーズタイペイ代表として、2017年のアジアカップや2018年のワールドカップ1次予選に出場した林郅為(リン・チーウェイ)はライジング福岡と契約。フィリピン代表としてアジアカップ予選に2試合出場したカマーク・カリノは青森ワッツへ入団。ともに自国ではパワーフォワードとしてプレーしているため、外国籍選手と競い合う中で存在感を示せるかにかかっている。

 Bリーグ参戦2年目となるサーディ・ラベナとヤンジェミンは今季にかける思いが強い。ともに昨シーズンはチーム合流が大幅に遅れ、ラベナは負傷が重なり、B1最年少だったヤンはチームのシステムを覚えることに時間を要した。ラベナは今夏に若手フィリピン代表の海外遠征に参加して経験を積み、ヤンは体作りに精を出してBリーグに戻って来た。また昨シーズンに秋田でプレーした王偉嘉(ワン・ウェイジャ)は、新たに3年契約を結んだことからも期待値の高さがうかがえる。また、2019年から西宮ストークスでプレーする劉瑾(リュウ・ジン)は契約3年目に突入した。継続契約となった4選手にも注目だ。

■フィリピン
キーファー・ラベナ(滋賀/183センチ/PG・SG/28歳)
サーディ・ラベナ(三遠/189センチ/SG/24歳)
レイ・パークスジュニア(名古屋D/193センチ/SG/28歳)
コービー・パラス(新潟/198センチ/SF/24歳)
ドワイト・ラモス(富山/193センチ/SG/23歳)
ハビエル・ゴメス・デ・リアニョ(茨城/195センチ/SG/23歳)
フアン・ゴメス・デ・リアニョ(東京Z/PG/22歳)
カマーク・カリノ(青森/203センチ/PF/23歳)
■韓国
ヤンジェミン(信州/201センチ/SF/22歳)
■台湾
林郅為(福岡/200センチ/PF/29歳)
■中国
劉瑾(西宮/202センチ/PF/31歳)
王偉嘉(秋田/198センチ/PF/23歳)
■インドネシア
ブランドン・ジャワト(宇都宮/193センチ/SF/28歳)

文=小永吉陽子

※当初アップした内容に誤りがありましたので、修正のうえ、加筆させていただきました。誠に申し訳ございません。