◆勝負強さを発揮してプレーオフMVP

 トヨタ自動車アンテロープスの司令塔である山本麻衣が、WリーグのプレーオフMVPを初受賞した。ファイナルでの勝負強いパフォーマンスを見れば、納得の受賞である。

 ファイナル1戦目は第4クォーターに同点と逆転の3ポイントを決め、3点リードした残り19秒には、勝ち越しのドライブを決めてトドメを刺した。残したスタッツは15得点7アシスト。

 2戦目は出足からエンジン全開。チームの初得点となる3ポイントを決めると、前半は3本の3ポイントを全部決めて9得点。とくに、第2クォーターに富士通レッドウェーブの内野智香英、町田瑠唯にの連続3ポイントで7点差まで縮められたあと、再び10点差、18点差とリードを広げた3ポイントは相手にとってダメージが大きかった。後半も容赦なく攻め続けてトータルで19得点3アシストでスコアリングリーダーとなった。

 特筆すべきは3ポイント成功率の高さだろう。1戦目は4本中3本、2戦目は5本中4本を沈め、チャンスには躊躇なく打ち続けた。大舞台で発揮した度胸満点のプレーはまさにMVPにふさわしい。1戦目に逆転勝利したあとのコメントはとても興味深かった。

「前半は自分のプレーができませんでしたが、我慢し続けてそこで下を向かず、最後の最後に自分らしさが出てホッとしています」

 激闘を制した喜びがあるなかで「ホッとした」という本音のコメントは、22歳の若手という立場ではなく、チームの重責を担う司令塔として独り立ちした責任感を見た瞬間だった。

◆大神コーチが語る日本代表活動で得た自信

 今シーズンの山本はWリーグだけでなく、東京オリンピックでの3x3代表やアジアカップとワールドカップ予選で5人制の代表に選出されるなど、日本代表の活動を通しての成長が著しかった。アンテロープスと3人制においてスキルアップの面で鍛えてきた大神雄子アシスタントコーチは、愛弟子の成長についてファイナル前にこのように語っていた。

「リム(山本)は今シーズンの日本代表の経験を経て、一気にいい表情になって顔つきが変わりました。今まではこちらから『ワークアウトやろう、練習やろう』と言っていたけれど、今は自分から『スキルワークやりましょう』と言ってくれて、取り組む姿勢が変わりました。日本代表の本来あるべき姿とは、『もっとうまくなりたい、強くなりたい、勝ちたい』という思いで戦う場所だということを、いい表情になったリムを見て改めて思いましたね。自分の現役時代を振り返りながら、いい顔になっていくリムを見ていると、改めてチャレンジこそが成長につながるのだと実感しています」

 その選手層の厚さから有力な優勝候補だったトヨタだが、今シーズン最も成長が求められていたのは、司令塔のポジションだ。昨シーズン、プレーオフMVPを受賞するまでに躍進した安間志織がドイツリーグに参戦することで、今シーズンは22歳の山本がスタメンに抜擢された。山本自身は3x3で発揮しているように、3ポイントやフィジカルの強さを生かしたドライブの力は持っており、どんな場面でも怯まない度胸の良さは証明している。課題としていたのは、司令塔としてのゲームメークであり、欲していたのは試合経験値だった。2連覇の立役者となった今、山本は自身の成長についてこのように手応えを語っている。

「昨シーズンは安間さんの負担を軽減することを考えて試合に出て、今シーズンはスタートとして自分で引っ張れたので優勝したという実感があります。自分としては、強みであるシュートを忘れずに伸ばしていきながら、今シーズンはパスを重視していて、タイミングや状況判断の部分を良くしていこうと取り組んできました。まだまだだけど、試合を重ねるごとに成長できました」
 
 ファイナルを前にして山本は、ガードコンビとしてスタメンを組む三好南穂について「サン(三好)さんは言葉も発するけど、プレーでは背中で見せてくれる。今シーズンはすごくいい成績を残していて、サンさんの覚悟が見えました。最後は花道を作って終わらせてあげたい」と語っていた。その三好は優勝後に「ファイナルでは下の子たち(若い選手)の活躍が頼もしいと思いました。これで心おきなく引退できます」と後輩たちの成長を喜んでいる。アンテロープスでも日本代表でも、たくさんの経験を積んで独り立ちしたシーズン。さらなるステップアップに向けて、これからも前に進み続けるだけだ。

「今後も成長しなければならない部分はたくさんあるので、今まで通りにコツコツと積み上げて、いい結果が出せるように頑張っていきたいです」

文=小永吉陽子

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