試合終了まで53秒、スコアは52−85。もう決して追いつくことはできない。それでも英明高校(香川)のキャプテン、仲村奈々星(3年)の目は、試合が始まった時と同じようにいきいきと輝いている。「リバウンド!」と叫び、味方の好プレーに手を叩き、ハドルを組む。高校最後の試合ということを、微塵も感じさせない気丈さに胸を打たれた。

 沖縄で生まれ育った仲村は、中学生のころ千葉で開催されたインターハイを現地で観戦している。その中で特に目を引いたのが、サイズがなくても元気で、最後まであきらめずに頑張れる英明だった。英明の井上晃コーチが仲村の中学の指導者とつながりがあったこともあって、仲村ははるばるその門を叩いた。「ほんまに出会いに感謝です」。香川の訛りで照れくさそうに言った。

 昨年はインターハイ、ウインターカップともに不出場。「負けた思い出しかない」と振り返る悔しい1年を経てキャプテンに就任した。今年の英明の3年生は、入部当初から仲村と山田琳華の2人しかいない。山田はケガで1年近く練習から離れ、試合にもほとんど出ていないため、仲村はコートに立つ唯一の3年生として下級生をリード。自身があこがれた気持ちのいいチームを取り戻すことに力を尽くし、見事にインターハイ、ウインターカップの出場権を取り戻した。

 井上コーチは仲村を「素晴らしいキャプテンシーの持ち主。『あなたのおかげで(県大会を)勝たせてもらいました』と素直に言えるような選手」と手放しで褒めたが、その途中には何度も厳しい言葉を投げ続けたという。

 「『お前にキャプテンなんて無理だ』って何度も言われて、先生に嫌な態度を取ってしまったこともあります。『なんでここ(香川)まで来たんやろう』って思うこともありました」。その言葉には思わず涙が交じったが、「それでもこうやって全国大会に出られました。途中が悪くても最後は良かったですし、3年間とても楽しかったです」と笑った。

 試合終了のブザーが鳴るまで、涙が出る暇などないくらい全力だった。試合後も仲間たちを笑顔でねぎらい続けた。厳しい練習の後には決まってアイスクリームを食べながら、バスケットのことやいろんなことを語り合った下級生たち。彼女たちは仲村が見せた最上級生の背中を、どのように引き継いでいくのだろうか――。

文=青木美帆