昨季までの5シーズン全てで、50勝以上を挙げたチームが2つある。それは直近3年連続でNBAファイナルを戦っている“西の雄”ゴールデンステート・ウォリアーズでもなければ、“東の雄”クリーブランド・キャバリアーズでもない。

 その2チームとは、2014年に通算5度目の優勝を果たしたサンアントニオ・スパーズと、ロサンゼルス・クリッパーズである。過去18シーズン連続して50勝以上を挙げているスパーズは、2013年、14年にNBAファイナルへ進出し、昨季はウエスタン・カンファレンス・ファイナルへと進出している。しかし、クリッパーズは過去5シーズンのプレーオフでNBAファイナルどころか、ウエスタン・カンファレンス・ファイナルにも進むことができなかった。

 2011年12月にクリス・ポール(現ヒューストン・ロケッツ)が加入してからというもの、クリッパーズは11年に新人王を獲得したブレイク・グリフィン、そして身体能力の高いビッグマン、ディアンドレ・ジョーダンが成長し、“ビッグ3”と呼ばれるようになった。 

 08年にボストン・セルティックスを優勝へと導いたドク・リバースがヘッドコーチに就任した13−14シーズンからというもの、クリッパーズはほぼ毎年、優勝候補の一角と呼ばれるようになった。ロースターにはシャープシューターのJ.J.レディック(現フィラデルフィア・セブンティシクサーズ)や短時間で2ケタ得点を稼ぐジャマール・クロフォード(現ミネソタ・ティンバーウルブズ)、15年夏にはポール・ピアース(元ボストン・セルティックスほか)も加わるなど、机上ではリーグでも1、2を争うほどの豪華戦力を誇っていた。

 しかしながら、プレーオフをとおしてポール、グリフィン、ジョーダンが3人そろって健康だった年はほとんどないに等しく、運に見放されていたと言えるような年もあった。16年はプレーオフのファースト・ラウンド途中でポールとグリフィンが、17年はグリフィンがケガに見舞われてシリーズ絶望となった。15年に関しては、ファースト・ラウンドでディフェンディング・チャンピオンのスパーズを第7戦の末に下し、カンファレンス・セミファイナルではロケッツ相手に3勝1敗と王手をかけるも、そこから屈辱の3連敗でシーズンを終えた。

 すると昨季終了後、ポールはトレードでロケッツへと、レディックとクロフォードはそれぞれフリーエージェント(FA)として他チームへと移籍し、“ビッグ3体制”は完全に終焉。ポールは移籍後に「変化する時だと感じた」と語っていたのが印象的だった。

 12月23日(現地時間22日)、現地メディア『The Vertical』に対してリバースHCは「クリスとブレイク、D.J.(ジョーダンの愛称)を中心としたグループで、私はタイトルを勝ち取るビジョンを持っていた。しかし我々はそれを成し遂げることができなかった。だが私のゴールは変わらない。それ以外にコーチする理由なんてない」と口にした。「時には変化が欲しいと思うこともあるし、変化を強いられることだってある。ただ結局のところ、変化を望んでも望まなくとも、ほとんどの場合、変化というのは良いものだ。我々は多くの勝利を手にしてきた。ただ勝者になれなかっただけのこと。そして、『勝者にはなれないだろう』と、このグループの状況を認識する時が来たということ。おそらく我々は(優勝するためには)十分ではなかったんだ」と続けた。

 「クリスが去ったことが理由の1つだと思う。別に誰かを責めるつもりじゃないけれど、一緒にプレーしていて楽しく感じなくなっていた。リーグも変わり、リーグのスタイルも変わった。ウォリアーズやロケッツも変わっていったんだ」とレディックは言う。

 12月23日(同22日)終了時、クリッパーズは主力選手のケガもありベストメンバーがそろわない中で、ウエスト10位の13勝18敗と苦しんでいる。ジョーダンにはトレードのウワサが流れるなど、チーム状況は決して良好とは言えない。

 それでも、この世界は勝利こそが全て。選手間のみならず、リバースHCとも良好な関係を構築していた昨季までのクリッパーズにとってはつらいことだが、今夏移籍したポールやレディック、クロフォードといった選手たちが所属するチームは、それぞれ昨季よりも好成績を残している。その要因の1つに、彼らが古巣で得た経験をもたらしているのかもしれない。

 変化を受け入れ、新たな道を歩み始めたクリッパーズ。今後、このチームが好転することに期待したい。