米ミネソタ州ブルックリンセンターで黒人男性が警官に撃たれて死亡した事件で、地元警察の署長は12日、発砲は事故だったと述べた。

ティム・ギャノン署長は記者会見で、ドーンテ・ライトさん(20)に発砲した女性警官は、電気ショックを与えるテイザー銃を使おうとしたところ誤って銃を抜いてしまった、と説明した。

これまでの警察の発表によると、ライトさんは11日午後、交通違反の疑いで運転していた車を停止するよう警官に命じられた。警官らはライトさんに逮捕状が出ていると判断し、逮捕しようとした。

いったん車外に出たライトさんは車内に戻ろうとし、警官と争いになった。警官はライトさんに発砲。ライトさんは車を運転してその場を去り、数ブロック先で別の車と衝突した。ライトさんはその場で死亡が確認された。同乗の女性は命に別条のないけがを負った。

ギャノン署長は会見で、警官が身に着けていたボディカメラの短い映像を公開した。警官が道路わきでライトさんに手錠をかけようとした際、ライトさんが車内に戻ろうとしている様子が記録されている。

その後、警官の1人が「テイザー、テイザー、テイザー」と言っているのが聞き取れる。こうした状況でのテイザー銃の使用は、警官にとって通常の行動だ。ライトさんは車内に戻ると、車を運転してその場を去った。同じ警官は「彼を撃ってしまった」と話している。

命にかかわるけがを負ったライトさんは、数ブロック先で衝突事故を起こした。

「当該警官はテイザーを使おうとして、1発撃ってしまったというのが私の見方だ」とギャノン署長は話した。「この痛みを和らげる言葉は持ち合わせていない」。

発砲した警官は休職を命じられたという。

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会見には、ブルックリンセンターのマイク・エリオット市長も同席。「ドーンテ・ライトのために確実に正義がなされる」よう全力を尽くすと述べた。

「私たちの心は今、痛みを感じている。私たちは今、痛みに苦しんでいる。今回の事件は、これ以上ないという悪いタイミングで起きた。私たちのコミュニティー全体が、アメリカ全土が、世界中が注視している中で発生した」

母親の説明

ライトさんの母ケイティーさんは、停車中の車内にいたライトさんから電話を受け、「バックミラーに芳香剤をぶらさげている」ために警察に停車させられたと聞いたと明らかにした。その後、争うような音がして、電話は切断されたと述べた。

「すぐに車に乗っていた息子のガールフレンドに電話したら、息子は撃たれたと言った(中略)動かずに横になっていると話した」

ケイティーさんはまた、警官たちが自分の息子の遺体を路上に放置したと話し、「誰も何も教えてくれない、誰も話してくれない(中略)お願いだから息子を地面から運んであげてと頼んだ」と述べた。


夜間外出禁止令

ライトさん死亡のニュースが広がると、ブルックリンセンターでは11日夜に抗議活動が発生。数百人がライトさんの名前を唱えながら、警察本部の前に集まった。

現地で取材するBBCのサマンサ・グランヴィル記者は、警察本部前の状況を報告。ヘルメットをかぶって盾を持った完全装備の警官隊が肩を寄せ合ってバリケードをつくり、抗議する人々は「私たちに正義がもたらされなければ、警察は平和を得られない」と声を上げながら、じわじわと前進を試みたとした。

また、黒人男性ジョージ・フロイドさん死亡事件を受けて発生した、昨年夏の暴動に似た場面だとし、地域一帯がいかに一触即発状態にあるかを示していると説明した。

ロイター通信によると、警察は完全装備の機動隊を出動させた。抗議する人々は、警察車両2台に投石し飛び乗るなどし、緊張が高まった。

抗議の人々は、道路にチョークで文字を書いたり、ろうそくをともしたりした。警察はその後、解散を命じ、催涙ガスや閃光発音筒を使用した。

地元紙スター・トリビューンによると、付近のショッピングセンターの約20商店が侵入被害に遭った。略奪も散発的に起こり、ミネアポリスの一部にも広がったという。

こうした状況で、当局は11日夜、夜間の外出禁止令を発令。12日も継続された。ミネアポリスと、隣接するセントポールの両市長は、それぞれの市内を対象に緊急事態を宣言。12日午後7時から13日午前6時まで、両市でも外出を禁止するとした。

ブルックリンセンターに近い同州ミネアポリスでは、昨年5月に発生した黒人男性ジョージ・フロイドさんの死亡事件で起訴された元警官デレク・チョーヴィン被告の裁判が続いており、緊張が高まっている。

フロイドさん死亡事件は、アメリカをはじめ世界各地で、人種差別や警察暴力に抗議するデモへとつながった。

チョーヴィン被告の裁判が開かれているミネアポリスの裁判所には、ミネソタ州の州兵が警備に派遣されている。その一部は、ブルックリンセンターのデモ対応にも派遣された。

ブルックリンセンターの抗議活動者の一部は、夜間外出禁止の時間が過ぎた後も路上に残っていたが、大部分はそれ以前に解散していた。

ブルックリンセンター当局は12日、すべての学校を休校とし、行事や活動を中止したと、地元メディアが報じた。

同日夜に予定されていた米プロリーグのアイスホッケーやバスケットボール、野球の試合は延期が決まった。