NTT(澤田純社長)は3月30日、東京大学(五神真総長)と共同で、室温動作可能な将来の汎用光量子コンピューターチップに必須となる高性能な量子光源(スクィーズド光源)を実現したと発表した。

 スクィーズド光とは、量子ノイズが圧縮された光で、これを用いることで量子もつれを作ることができる。光量子コンピューターチップの実現には、広い帯域と高い圧縮率をもった連続的なスクィーズド光が必要とされている。
 スクィーズド光は、非線形光学結晶に励起光を照射することで生成される。従来手法の多くは、鏡を用いて結晶の中で光を往復させることで量子ノイズ圧縮率の高いスクィーズド光を生成していた。しかし、その帯域は構造上の理由から高々ギガヘルツオーダーに制限されていた。そこで、結晶中に光の通り道を作り、励起光が1回通過する間にスクィーズド光を生成する手法が広帯域なスクィーズド光源として期待されている。この手法では、ギガヘルツの1000倍にあたるテラヘルツオーダーの帯域が期待できるものの、これまで連続的な光として報告されている量子ノイズ圧縮率は37%程度にとどまっていた。
 今回、NTTで研究開発を進めてきた高性能な非線形光学結晶デバイスと東京大学の有する高度光制御・測定技術により、75%以上の量子ノイズ圧縮に成功し、同手法での世界最高値を更新した。この値は、任意の量子計算を実行できる量子もつれ(2次元クラスター状態)の生成に必要となる65%を超える値となる。
 また、得られたスクィーズド光は、テラヘルツオーダーの帯域を有することが確認できた。これは飛行する光量子ビットの間隔をおよそ300ミクロン程度に短縮し、NTTが光通信応用に開発してきたような光学チップ上での光量子計算を可能とする。さらに計算のクロック周波数を上げることができることから、高速な量子コンピューターの実現も期待できる。
 なお、今回実現したのは光量子コンピューターの光源部分にあたる。今後、この広帯域なスクィーズド光を活用して、これまで以上の大規模量子もつれ状態の生成と汎用量子コンピューター実現に向けた各種光量子操作を実証する。また、現状これらの実験は光学定盤上でミラー、レンズなどの多数の光学部品とともに実験されており、非常に大きいシステムとなっている。今後はNTTで培ってきた光集積デバイス技術を駆使し、小型の光チップ上で光量子コンピューターを実現するための技術開発を行っていく予定。