AWSの医療分野での存在感が高まっている。アマゾンウェブサービスジャパン(AWSジャパン)は、AWSを活用したオンライン診療サービス「curon(クロン)」を提供するMICIN(マイシン、原聖吾CEO)との協業事例を公表した。新型コロナウイルスの感染拡大を防止する観点からオンライン診療のニーズが急増。curonも、新規患者の4月の登録数は今年1月に比べて10倍に増加した。医療機関による積極的な利用が広がる中、サーバーなどのITリソースをすぐに増やせるクラウドの特性を存分に生かすことでユーザーニーズに対応した。

 オンライン診療は、高血圧や糖尿病といった生活習慣病などを中心に利用が進んできた。国の規制緩和も段階的に進んでおり、curonサービスを利用する診療所や病院は全国で3500施設を超えるまで普及。だが、今年2月頃から顕在化してきたコロナ禍によって、オンライン診療を希望する医療機関や患者が急増。国もオンラインによる“初診”の容認や、診療報酬上の追加的評価が今年2月から始まったことで、今年1月に比べてこの4月のcuronの問い合わせ数はおよそ10倍、診療回数は約4倍、患者登録数は10倍に増えた。これまでオンライン診療の対象でなかった皮膚科や小児科、耳鼻科といった診療科からの問い合わせも増えている。
 curonはオンラインでの「予約」、チャットで事前に「問診」、スマートフォンのビデオ通話機能を使っての「診察」、「決済」、処方箋や医薬品を患者宅に「配送」する一連のサービスを提供する。この5月21日には「curonお薬サポート」の名称で、調剤薬局が電話での「服薬指導」ができる機能を追加。本来は、改正薬機法によって今年9月から始まる予定だったオンライン服薬指導に合わせて開発を進めていたが、コロナ禍を受け発出された厚生労働省の事務連絡のもと、一部機能を前倒しして始めることを決めた。
 他にもコロナ禍によって遅れが目立つ医薬品の開発に、オンライン診療と連携した「臨床試験」サービスを医薬品開発支援のシミックと協業して今年4月から本格化。いずれもAWS基盤上で開発している。マイシンの原CEOは、「AWSには必要な各種の機能が充実しており、限られた開発リソースを有効活用できるとともに、ユーザー数が急増しても容易にスケール(拡張)できる」ことを評価。AWSジャパンで健康医療分野を担当する佐近康隆・インダストリー事業開発部シニア事業開発マネージャーは「健康医療の分野でAWSが積み上げてきた実績がライバル他社との差別化になる」と競争優位性を指摘した。
 マイシンでは、将来的には全国約10万の診療所、約1万の病院の3〜4割がオンライン診療サービスの市場ターゲットとなると見ている。また、AWSジャパンでは国のガイドラインに沿った医療情報システム向けの参照モデル(リファレンス)をキヤノンITソリューションズやNEC、日立システムズなどリファレンスパートナーとともに策定。最新ガイドラインに沿ったリファレンスの説明会を今年7月に開催するなど医療健康分野でのAWS活用促進に力を入れる。(安藤章司)