富士通は10月5日、同社自身のデジタルトランスフォーメーションを進めるプロジェクト「Fujitsu Transformation(フジトラ)」を本格的に開始したと発表した。CDXO(Chief Digital Transformation Officer)を兼任する時田隆仁社長のリーダーシップの元、今年4月に富士通に参画した前SAPジャパン社長の福田譲・執行役員常務CIO兼CDXO補佐が実質的な旗振り役となり、本体の各部門のみならず、グループ企業、リージョン横断で富士通グループのDXに取り組む。総額1000億円以上の投資を予定している。

 同日に開催した記者説明会で時田社長は「かねてより、富士通は伝統的なIT企業の姿からDX企業へと自らを変革し、お客様や社会のリファレンスカンパニーになるというメッセージは広く伝えてきた。DXにより新型コロナウイルスの脅威を乗り越えて社会をより豊かにしていこうという動きは世界中で出てきているが、(フジトラを通して)富士通はそれをけん引していきたい」とフジトラの意義を説明。また福田常務は「一過性のニーズではなく、持続的にDXを行う仕組みをつくるのが大事。プロジェクトが不要になることがゴールだ」と強調した。
 フジトラの推進体制については、まず国内15部門、海外5リージョンから、それぞれのDX責任者として「DX Officer」を選出。このDX Officerが部門横断の取り組みの中心的な担い手となり、全社施策の各部門・リージョンへの浸透、各部門ごとのDXも主導する。さらに、10月1日付で時田社長直下のDX推進組織としてCDXO Divisionを設置。デザイナー、アジャイルコーチ、営業、SE、社内IT、財務経理、広報IRなど多様な属性の人材から「DX Designer」を選び、DX Officerとともにフジトラ推進の中心的な役割を担ってもらうという。
 福田常務はフジトラの具体的な施策を検討する前提として、既存事業の強化とDX支援をはじめとする新規事業の拡大を同時に進める「“両利きの経営”を目指す」と話す。ただし、「富士通の文化や社内制度は既存事業に最適化されすぎている。これを両利き経営に対応できるかたちに変えていく必要がある」とも指摘。デザイン思考やアジャイルなどのフレームワークを全社的に導入、浸透させていく。
 データドリブン経営に向けたシステム投資にも着手する。グローバル、グループ全体で「経営、業務プロセス、データ、ITを標準化し、一つのシステムにする」(同社)計画。これにより、経営から現場レベルまで、データに基づいてリアルタイムに現状を把握し、未来予測、意思決定・アクション、マネジメント、オペレーションの最適化を図る。まずはその第一弾の取り組みとして、「グローバル・シングルERPを実現する『One ERPプロジェクト』を始める」(福田常務)という。
 また、顧客や従業員の声を高頻度で大量に集め、業務データと組み合わせて市場の変化の兆しを随時分析・把握し、DX施策の立案や改善に役立てる「VOICEプログラム」にも全社で取り組む。(本多和幸)