富士キメラ総研は、テレワークの普及で急速に利用が拡大しているSaaSをはじめ、AIやIoT、データ分析など、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するにあたって活用機運が高まっているIaaS/PaaSなど、パブリッククラウドの国内市場を調査し、その結果を「2021 クラウドコンピューティングの現状と将来展望 市場編/ベンダー編」にまとめた。「市場編」では、SaaS、DaaS、IaaS/PaaSといったパブリッククラウド市場を調査・分析し、将来を展望した。「ベンダー編」では、42社の事業者の動向を整理・分析している。

 パブリッククラウドは、スクラッチやパッケージを活用したシステム構築と比較すると、初期導入費用を抑えられ、導入期間の短縮やインフラを含めたシステム全体での運用管理負担を大幅に軽減できることから、オンプレミス環境からパブリッククラウドへの移行が進展しているという。
 そこで、富士キメラ総研では20年度のパブリッククラウド市場を1兆7265億円と見込んでいる。新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機に、これまでオフィスで行っていた業務をいかに就業場所に関係なく行えるかが重要視され、テレワーク環境の構築を目的とした需要が増加したことから、前年度比25.2%増と大幅に伸びるとのことだ。
 24年度には、19年度比2.1倍の2兆8296億円が予測されるとしている。ニューノーマル時代で、AIやIoT、データ分析などのDX推進に伴う利用増加が期待されるほか、クラウドネイティブな仕組みへの変更、サーバーレス化やコンテナなどを活用したインフラの効率化への取り組みなど、運用コスト面や生産性の効果をより求める機運が高まっており、大幅な拡大が期待できるという。
 SaaSについては、20年度は新型コロナの影響で従来対面や紙で実施していたアナログ業務のSaaS化が進んだことで、市場は1兆円突破が見込まれる。この動きがさらに顕在化することで、今後も市場は拡大が続くと捉えている。
 業種特化システムでは、徐々にSaaSへの移行が進んでいる。大手企業で、ビジネス環境がすさまじいスピードで変化する中、スクラッチやパッケージベースのシステムでは変化に迅速に対応するのが難しくなりつつあることから、常に最新機能が利用可能で柔軟にシステム連携が可能なSaaSの採用が進められている。
 DaaSは、05年度ごろからオンプレミス環境でのデスクトップ仮想化/シンクライアントの導入が進んでいたが、初期投資の大きさや運用管理の難しさから、ベンダーが所有する基盤を利用したDaaSへの移行が進展しているとのこと。20年度は、緊急事態宣言の発出によって、テレワーク環境の整備を進める企業が全国的に増加したことで、市場は前年度比17.8%増の364億円が見込まれるという。社会で多様な働き方が認められつつあるなか、今後も人的リソースの変化に応じて、柔軟にクライアント環境を設定・変更できるDaaSの需要は高まっていくと分析している。
 IaaSは市場形成当初、急激なトラフィック増加や柔軟で迅速なサービス開発・提供が可能なことから、ゲームやウェブサービスの基盤として仮想サーバーを利用するエンターテインメント系企業の需要がけん引。徐々に一般企業でも採用が広がり、社内システム基盤としての利用が進みつつあることから、市場は拡大しているという。仮想共有型/仮想専有型がけん引しているが、移行後もオンプレミス環境と同様の環境で運用していきたいというニーズも強く、柔軟なカスタマイズが可能な物理専有型の注目度が高まっているとしている。
 PaaSは、メガクラウドベンダーが主体となってラインアップ拡充を進めており、国内ベンダーでもアプリケーション開発基盤として、またはデータベース/データウェアハウスとしての利用が増えたことで市場が拡大。また、AI/機械学習やIoT、データ分析の基盤としてPaaSを導入し、デジタルトランスフォーメーションの実現に取り組む企業が増加していることから、20年度の市場は前年度比35.3%増の2206億円と見込んでいる。今後も大幅な伸びが期待され、24年度は19年度比2.8倍の4586億円が予測される、とのことだ。