増税前後でさらに利用者を増やし、決済比率が高まっているキャッシュレス決済。東京に住んでいるとスマホ決済が日常の光景になり、店舗でも推進している様子が手に取るように分かるが、それ以外の地域の状況はどうなっているのか。街全体でキャッシュレスを推進する福岡市中央区のビックカメラ 天神2号館で話を聞いた。

 今回、なぜ取材対象にビックカメラを選択したかというと、PayPayの「100億円還元祭」が実施された昨年末以前の早い時期からスマホ決済に対応していたからだ。当時、まだ利用できる店舗が少なかったことや還元金額に上限がなかったことから、ビックカメラにはスマホ片手に利用者が殺到した。記者も盛況の様子を東京・有楽町店に確認しにいったが、レジ前はPayPay決済待ちの行列ができていたのを思い出す。
 取材に応じてくれた天神2号館の中川卓也副店長によると、100億円還元祭開催時の盛況は同店舗でも変わらなかったようだ。やはり売れたのは「ダイソンの掃除機やApple製品」。普段はめったに値下げしない商品を購入する人が多かったという傾向は東京と変わりない。「PayPayのキャンペーンは年末商戦のピーク時より少し早かったが、例年のピークを上回る売り上げだった」(中川副店長)。
 最近は販売員も顧客もだいぶスマホ決済に慣れてきたが、導入時は双方ともに四苦八苦することが多かったそうだ。「最初は覚えるのが大変だったが、慣れてきたことでレジ業務の時短につながっている。今でもキャンペーン内容などは販売員とお客様がスマホ画面を見ながら確認することがある」と中川副店長は話す。
 利用するのは男性のビジネスマンや若者が中心だったが、1年が経過し、主婦層にも浸透してきたという。購入する商品も日用品などの金額の安いものに移ってきている。福岡では市や商工組合がキャッシュレスを推進しており、スマホ決済が利用できる店舗が一気に拡大した。大手の商業施設はもちろん名物の屋台などでも利用できる場所は多い。
 また、11月1日に福岡県民にとっての聖地ともいえる「福岡ドーム」が「福岡PayPayドーム」に改名されることが発表されたが、球団と紐づくPayPayに対する愛着もあったようだ。「天神2号店に限定すれば、スマホ決済はほとんどがPayPay。PayPayが使えるからビックカメラというお客様も目につく」とのこと。スマホ決済の導入が集客効果も生んでいる。
 大いに店舗に貢献しているスマホ決済だが、完全に満足しているというわけではない。その理由が「システム障害」だ。スマホ決済は大規模なキャンペーンを展開するたびに、システムがダウンして一時的に利用できなくなるのがお決まりになっている。自ら対処できる問題ではないが、顧客のストレスは少なからず店舗に向けられてしまう。「できるだけ早くもっと安心してお客様におすすめできる手段にしてもらえれば」と中川副店長も本音が漏れる。
 天神2号館では増税後の現在、キャッシュレス決済(スマホ決済以外も含む)の比率は3分の1程度に上るという。福岡市では経済産業省が音頭をとるキャッシュレス・ポイント還元事業や各決済事業者のキャンペーンとは別に、商業組合主体のキャッシュレスでお得になる施策が展開されているなど、他の地域以上に導入に積極的。街をあげた後押しが、消費者の「使ってみようか」という空気の醸成に一役買っているようだ。(BCN・大蔵大輔)