前回の記事(知らぬ間に「リモート漏洩」? テレワークで気を付けたい3つのこと=https://www.bcnretail.com/market/detail/20211027_250051.html)に引き続き、テレワーク時代の新たな問題について解説していく。本記事で紹介するのは、オンライン会議が主流になった現在のオフィスで顕著な「イヤホンボイス公害」だ。
 

●イヤホンボイス公害とは


 「イヤホンボイス公害」とは、イヤホンを装着することで自分自身の声が聞き取りにくくなった結果、声の大きさの調整が難しくなってしまい、無意識のうちに大きな声を出して周囲に迷惑をかけてしまう問題のことだ。この記事を読んでいる読者の中にも、デスクからオンライン会議に参加する同僚の声で集中力が散漫になった、あるいは、自分自身がオンライン会議中に大きな声を出してしまい、まわりの同僚からの視線を感じた、という経験がある人もいるのではないだろうか。
 イヤホンボイス公害は、もはや珍しいものではない。コロナ禍でテレワークが浸透し始めた2020年12月時点で、「まわりでイヤホンをしてオンライン会議に参加する人の声が大きくてうるさい。迷惑だと思ったことがある」と回答した人は40.75%にのぼった。長く続いた緊急事態宣言が明け、オフィスに人が戻り始めた現在、「イヤホンボイス公害」はますます深刻化していることが予想される。

●うるさいだけでは済まされない、イヤホンボイス公害のリアル


 「イヤホンボイス公害」を見過ごせない理由は、ただうるさいだけでは済まされないことにある。本来は仕事に集中するためのオフィスで、1日中、常に誰かがパソコン画面に向かってしゃべっている。そんな状態が続けば、どのような弊害が起こるだろうか?

●集中力がそがれ、生産性ダウン


 声が飛び交うにぎやかなオフィスでは、社員の集中力は低下し、生産性も下がりかねない。たとえば経理や設計など、特に高い集中力を要する仕事をしているメンバーにとって、イヤホンボイス公害の絶えないオフィスは、もはや仕事場とは言えないだろう。

●社員の満足度が低下する可能性


 コロナ禍でリモートワークの有無が社員の満足度に大きな影響を与えたように、企業がアフターコロナに合わせてどのように働く環境を整えることができるかは、今後の社員満足度の鍵になることが予想される。コロナ禍で変わりゆく働き方に合わせて空間をアップデートできておらず、イヤホンボイス公害が目立つオフィスに、社員たちはいい印象を抱かないだろう。感度の高い社員たちは、いち早くオフィスを最適化している他社を横目に、自社に不満を持つ可能性もある。

●まわりを気遣うあまり、100%のパフォーマンスができない


 かといって、イヤホンボイス公害にばかりに気をとられていては、今度はパフォーマンスに影響が出る。せっかく自信のある提案をつくっても、まわりに遠慮し、か細い声でプレゼンをすることになれば、その熱意は十分に伝わらない。また、本来は画面の向こう側にいる顧客に100%の力を注ぎたいところ、まわりの同僚にも気を使いながら話さなければいけないというのは、なんとも煩わしい。高いパフォーマンスを発揮するためにも、オンライン会議時のパーソナルな空間が求められる。

●個室ブースの導入で、イヤホンボイス公害を軽減


 イヤホンボイス公害を解決するためには、オフィスの移転や改装などが考えられるが、一番手軽に実現できるのは、オンライン会議用の個室ブースを導入することだ。
 コロナ時代に突入した2020年以降、テレワークブースの市場は拡大し、プラザクリエイトの「One-Bo」やオカムラの「テレキューブ」、富士フイルムビジネスイノベーションの「CocoDesk」など、さまざまな個室ボックスが活躍の場を広げている。たとえば「One-Bo」は50万円台から購入可能。会議室の増築工事をするよりもコスパがよく、比較的手軽にミーティングスペースを確保できる。社員が1人で使うには大きすぎる会議室を占拠したり、まわりへの配慮で気疲れしたりすることはなくなるはずだ。
 1台から導入できる個室ボックスのメリットは、将来、オフィス移転をすることになっても、資産として次のオフィスにもっていけることだ。もちろん、改装の際にも配置換えで対応ができる。
 まだまだ状況が流動的な今、オフィスを大きく変えることがむずかしいのであれば、まずは個室ブースを購入し、目の前の「イヤホンボイス公害」に向き合ってみるのも選択肢だ。まわりに音で迷惑をかけることなくオンライン会議に参加できる場所が1つあるだけでも、社員はオフィスがアップデートされたと感じるだろう。

●個人でも意識したい、コロナ禍のスペースマナー


 とはいえ、各企業が個室ブースをそろえ、社員が自由に使えるようになるまでは、少し時間がかかる。そこで、本記事では個人ができる「イヤホンボイス公害」対策を紹介したい。
 コロナ禍で人々が新たな働き方にシフトする中で、リモートゆえのビジネスマナーが生まれた。たとえば、オンライン会議で画面共有をする際には、画面上に機密情報がないか事前にチェックすること、相手が話しているときにはうなずき「聞いていますよ」のサインを送ること。コロナ禍で人々が知らずしらずのうちに身に着けたマナーだ。
 そんな新たなマナーのひとつに、「スペースマナー」が挙げられる。スペースマナーというのは筆者がつくった造語で、ここでは「オンライン会議時、会議相手とまわりにいる人、両者の空間に配慮するマナー」と定義する。
 たとえば、オンライン会議に参加するときには、がやがやとした作業スペースやカフェではなく、静かな自宅やオフィスを選ぶことが良きスペースマナーだ。必要に応じて、オフィスの会議室を予約したり、簡易的なパーテーションを使ったりすることも大切だろう。声の聞き取りやすさは円滑なコミュニケーションに繋がる。会議参加時には、自分の声を拾いやすい、単一指向性マイクのヘッドセットを使うことも忘れないでおきたい。
 自宅やオフィスに静かな場所がないときは、個室ブースがあるカフェやコワーキングスペースの利用もおすすめだ。たとえば、カフェのように気軽に使えるテレワークスペースを提供する「アクセアカフェ」では個室ブースを設置しており、利用者は追加料金なしで利用ができる。
 万が一、やむを得ずまわりに人がいる場所からオンライン会議に入ることになったときには、周囲の人に「今からオンライン会議に入るので、音がうるさいかもしれませんが、ご理解ください」などと一言伝える。そして、ミーティングの相手には「オフィスの席から参加しているので、少しまわりがうるさいかもしれません。原則はミュートにさせていただきます」など、自分が置かれている状況を伝えておく。そんなたった一言が、人々が感じるイヤホンボイス公害へのストレスを和らげていくだろう。
 オフィスの変革を待つ一方で、自らのビジネスマナーもアップデートしておきたい。まずは「スペースマナー」を意識することで、個人レベルでもイヤホンボイス公害の軽減に努め、オンライン、オフライン、そして自分。コロナ禍の「三方よし」の働き方を追及していきたいものだ。(プラザクリエイト One-Bo事業部部長 木村漠)
■執筆者プロフィール
京都出身。Web開発の個人事業や会社設立などを経験したのち、2020年にプラザクリエイト入社。個室ブース「One-Bo」を通じてコロナ禍のオフィス課題解決を目指す。趣味はサウナ。