グラフィックボード市場が大幅な前年割れに直面している。この8月の販売前年比は台数が59.5%と4割減、金額に至っては45.2%と半減以上だ。暗号資産の代表格、ビットコインの価格が昨年秋のピークから6割の大幅下落を記録。ひと相場終わったことでグラフィックボード特需も終息した格好だ。全国2300店舗の家電量販店やネットショップの実売動向を集計するBCNランキングで明らかになった。

 グラフィックボードは通常、PCゲームなどを高速動作させる高度なグラフィック処理を担うパーツ。一方で、暗号資産システムへの計算能力提供、いわゆるマイニングにも活用されている。そのため、暗号資産相場とグラフィックボードの売れ行きには密接な関係がある。ビットコイン価格は昨年10月、月の終値で1ビットコインが700万円を超え過去最高値を更新。11月8日には760万円を突破して1日の終値の最高値を記録した。相場の高騰にあわせ、グラフィックボードの販売も急拡大。昨年9月には販売台数前年比で123.3%、販売金額で287.2%を記録。平均単価も上昇し、ピークの11月には6万9700円まで高騰した。しかし、ビットコインが11月に天井をつけ下落へと向かうとグラフィックボードの販売も縮小。今年の1月には久々に台数、金額とも前年を割り込んだ。
 3月、ビットコインが500万円台まで戻すと、グラフィックボードの売れ行きも若干改善。しかしビットコインが4月以降再び大幅下落に転じ、6月には270万円台にまで落ち込んだ。同様にグラフィックボードの販売前年比は台数76.3%、金額50.2%と大幅なマイナスを記録した。ビットコイン価格は7月、300万円を回復。グラフィックボードも販売台数前年比が112.7%と2桁増に戻した。しかし、8月、ビットコインが300万円を割ると、グラフィックボードも台数、金額とも大幅なマイナスに逆戻り。一時7万円目前まで高騰していた平均単価は4万9300円と急落。特需を経て市場は平常に戻りつつある。
 グラフィックボードに搭載されているチップセットのメーカー別販売台数構成比では、NVIDIAが8割前後を占め、残りをAMDなどがシェアを分け合っている状況。NVIDIAの中では、GeForce RTX 3060搭載ボードが一番人気で、8月時点は16.8%を占めた。2位と3位は、GeForce GTX 1660 SUPERが10.4%、GeForce RTX 3060 Tiが10.0%でほぼ横並び。以下9位までをNVIDIAのGeForceが占め、AMDの最上位は3.2%のRADEON RX 6400で10位だ。グラフィックボードのメーカーシェアでは、1年を通じてMSIが優勢。この8月も31.0%でトップシェアだった。2位はASUSで24.9%。4月にはMSIに0.3ポイント差で首位まであと一歩のところまで肉薄した。以降、いったんシェアを落としたが、ここにきて再び差を縮めつつある。3位はCFD販売で11.7%。マイニング特需の昨年10月は29.8%でトップシェアを獲得、12月、1月とトップを記録したが、この春以降シェアを落としている。
 今後、暗号資産が盛り上がりを見せればグラフィックボードにも再び特需が訪れる公算が高い。しかし、足元の世界的なインフレや金利高などから、暗号資産相場も大幅上昇は見込み薄。グラフィックボード市場は当面、ゲーミング用途など本来の需要に対応していくことになるだろう。(BCN・道越一郎)