マイク付きのヘッドホン・イヤホン市場(以下ヘッドセット市場)が活況を呈している。売れ行きが好調なうえ、この1年でトレンドも急激に変化していることが、家電量販店・ネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」から分かった。ここでは、平均単価やメーカーシェアなどの実売データの推移から、躍進要因を分析した。

 まず、過去2年における市場全体の販売台数伸び率(前年同月比)をみると、ほぼすべての月で好調な売れ行きが続いていることがわかる(図1)。とくに2016年12月からは前年比2ケタ増が多くの月で続いており、この11月は134.1%を記録。ここ数年では最大の伸び率となった。一方、平均単価は、これまで4000円台後半で推移してきたが、需要増が顕在化した1年ほど前から徐々に上昇。11月には7000円に迫る動きとなった。
 販売増と平均単価の上昇が同時に進んだのは、Bluetooth対応製品が一気に受け入れられたためだ。市場全体に占める対応製品の台数比率は、これまでは3割台であったが、徐々に比率は高まり、この11月は初めて5割を超えて53.1%となった(図2)。対応製品は非対応製品に比べて価格は高い。11月の平均単価で比較すると、対応製品は約1万円であるのに対し、非対応製品では4000円弱と2〜3倍の開きがあることが、市場全体の単価を押し上げる要因となっている。
 ではなぜ、Bluetooth対応製品が躍進を遂げているのか。その背景のひとつには、スマートフォンにイヤホンを繋いだまま通話をするニーズが高まったうえ、iPhone 7以降では、物理的にイヤホンジャックを使用できないスマートフォンユーザーが増えたことだ。こうした変化に、ヘッドセットメーカーが応え、ニーズに沿った多彩な製品を揃えたことが決め手となったといえるだろう。Bluetoothに対応した製品数を集計してみると、15年11月時点ではおよそ600製品だが、17年11月では1100製品が登場しており、わずか2年で品数は倍増している。
 そこでBluetooth対応製品に限定し、メーカーシェアの推移を算出した(図3)。過去2年、トップシェアを守り続けているエレコムは今年6月以降、シェアを落としている。これはエレコム製品の売れ行きが鈍ったわけではなく、2位以下が大きく躍進してきたためだ。直近では複数のメーカーが1割前後までシェアを伸ばす混戦状態で、市場はまさに群雄割拠の様相を呈しているのだ。
 製品別にみると、現在、最も売れているのがアップルの「AirPods」。発売当初は品薄状態が続き、消費者は入手するのに4〜6週間を要したが、今年の夏以降は供給が安定し、売れ行きに拍車がかかっている。「AirPods」の単価は約1万6000円と、競合製品のなかでは割高だが、10月にソニーが「WF-1000X」、11月にはBOSEが「SoundSport Free wireless headphones」の販売を開始しており、いずれも単価は2万円を超える。高額にもかかわらず、販売台数では「AirPods」に次ぐ規模で、人気モデルの一角を占めている。
 これらの高額製品は、単に音質がよいだけではない。マイクが付かない製品も含め、従来は音楽を楽しむことが主であったが、今ではスマートフォンやアプリと連携して音声認識や細かな設定が可能で、スポーツ用として雨や衝撃に強いなど、さまざまな特徴を兼ね備えている。販売台数が伸び、平均単価も上昇するいま、消費者のヘッドセットに求める価値観は変わってきているのかもしれない。(BCNアナリスト 山口渉)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。