カメラ系家電量販店のビックカメラとヨドバシカメラの2017年を振り返りながら、18年を展望してみよう。ビックカメラは、非家電商品の扱いや仮想通貨ビットコインの決済対応など旬の話題にすばやく対応する姿勢が目立つ。ヨドバシカメラは、経常利益率8.4%(17年3月)という業界トップの高収益を、インターネット販売でも追求する姿勢が印象的だ。

●ビックカメラは「白・クロ」逆転


 「家電を落ち込ませたくはないが、人口が減るなか中長期的にみて大きな伸びが期待できない。ビックカメラでは非家電を30数年前から扱っている。玩具や酒は25年以上の歴史があるので、引き出しはある」。
 ビックカメラの取締役専務執行役員の安部徹経営企画本部長は、非家電カテゴリの扱いに自信をのぞかせる。17年11月28日に東京・原宿の竹下通りにオープンした実験店「ビックカメラセレクト原宿店」は、今年度の家電量販市場を振り返る上で、象徴的な店舗のひとつだろう。
 商品構成は非家電が7割、家電が3割。売場面積はわずか330m2というコンパクトな店舗だ。池袋や有楽町、名古屋など都市部の駅前で、スマートフォンやデジタル家電、白物家電、酒類、自転車など幅広い商品を品揃えする都市型カメラ系量販店のスタイルとは大きく異なる。
 「非家電」の中身をみると、女子中高生など若い女性をターゲットにしたカラーコンタクトレンズ(カラコン)やリップといった化粧品や薬、日用品を豊富に取り揃える。ターゲットではないシニア向けのエイジングケアなどを外すことで、化粧品・薬・日用品のアイテム数はビックカメラの大型店舗と引けを取らないという。人口の減少で家電マーケットが縮小するなか、家電製品による売り上げの減少分を、こうした非家電分野で補う戦略だ。
 先に掲載した(上)(中)でも紹介したように、17年の家電量販各社への取材から見えてくるのは、従来の延長線上で郊外の未開拓マーケットを着実に刈り取っていくケーズホールディングス以外は、ビックカメラのような「非家電」領域の開拓や、ヤマダ電機のような住宅・リフォーム、ヨドバシカメラのようなインターネット販売などは各社の新しい取り組みだ。
 11年7月のアナログ放送停波によるテレビの買い替えでは、10年に国内出荷台数2519万台(JEITA調べ)の特需が発生した。この特需が反映されたビックカメラの11年8月期の決算を振り返ると、売上高6121億円のうち音響映像(テレビやカメラなど)の構成比は32.7%、情報通信(PCや携帯など)は32.3%、家庭電化(エアコンや冷蔵庫など)は15.9%、その他の非家電は18.1%だった。ここでいう非家電はゲームや時計、スポーツ用品、酒類・飲食物などを指す。
 しかし、直近の17年8月期決算では、売上高7906億円のうち音響映像は16.1%、情報通信は31.0%、家庭電化は31.5%、非家電は19.7%である。郊外型で白物家電の販売に強いコジマを12年に買収した影響があるとはいえ、11年8月期と比較してクロモノと白物の比率が見事に逆転していることがわかる。
 15年8月期決算から「その他」に新登場した「医薬品・日用雑貨」は前年比193%、16年は139%、17年は127%と大きく伸長。売上構成比は小さいものの15年に1.1%、16年に1.5%、17年に1.9%と毎年0.4ポイントずつ高まっている。
 原宿の竹下通りにはマツモトキヨシやウェルパーク、コクミンなどの「競合」が並ぶ。「関連する家電製品をセットで展示できるのが強み」と安部専務は、化粧品と理美容家電などのクロスマーチャンダイジングでドラッグストアとの違いを鮮明にする。

●アマゾンと真っ向勝負の「ヨドバシ・ドット・コム」


 業界トップの高収益を誇るヨドバシカメラの藤沢昭和社長はBCNのインタビューで、在庫回転率について「理想は年間24回転、1か月に2回転を目指す。現在は年間17、18回転ぐらい」(16年8月)と答えている。「少量、多品種、高回転」の3つを重要な経営指標に掲げる同社の高効率経営はブレない。
 一方、売上高1000億円を突破したインターネット通販の「ヨドバシ・ドット・コム」は、450万アイテム以上を扱うロングテールビジネスだ。効率を追求するヨドバシカメラの経営の足を引っ張るのではないか。その点は藤沢社長も承知の上で「(ネット通販は)在庫を持たなければならず、多少回転数は落ちるが理想は年間24回転」と語る。1か月にヨドバシの在庫を2回転させる超効率経営の姿勢を崩さない。
 むしろ、インターネットと店舗を意識することなく利用できるユーザーベネフィットを追い求める。ネット通販の台頭による荷物量の急増で、ヤマト運輸が10月に27年ぶりの運賃の値上げに踏み切ったが、「ヨドバシ・ドット・コム」は「送料無料、当日配送」の旗を降ろさない。ネット通販最大手のアマゾンに真っ向勝負を挑む。
 16年に商品を注文してから最短2時間半で自社配送便で届ける「ヨドバシエクストリーム」を開始したり、アウトレット京急川崎を除くヨドバシカメラ全店で、店舗に在庫がある場合、ネットで注文してから30分以内に商品を用意するサービスを開始したりした。
 さらに17年7月には「マルチメディアAkiba」や「マルチメディア梅田」「マルチメディア博多」でネット注文後に24時間、店舗で受け取れるサービスを展開するなど、インターネット販売と店舗を融合させたオムニチャネルのスピードと利便性の進化に余念がない。
 そうした「ヨドバシ・ドット・コム」を襲ったのが、10月27日に発生した一部商品の配送遅延だ。10月31日午前8時以前の注文分が一時出荷停止となり、復旧のメドが立たない事態に陥った。業界関係者が固唾をのんで見守るなか、再開したのは約1か月後の11月21日だった。原因については「川崎の物流センターへの移転に伴う作業」という以外、明らかになっていない。
 「ヨドバシカメラアッセンブリーセンター川崎」は、14年から巨額投資をしてネット販売にも適した最新鋭の物流システムを導入した、同社のロジスティクスの要となる施設だ。そこで起きたトラブルが、移転作業に伴う一過性のものだったのかどうか。再開後は通常通りの運用に戻ったが、後遺症がないかに注目が集まる。
 もっともネット通販のスピード競争をめぐっては「過剰競争だ」とする消費者の声もある。再配達の無駄をなくすために「宅配ボックス」が急に売れて品切れになるということも起きた。このあたりはアマゾンとのサービスをにらみながらの修正があるのだろうか。
 ヨドバシカメラは、毎年人気となる「ヨドバシ・ドット・コム」の福袋「夢のお年玉箱」を、今年は12月1日から、整理券やアプリではなく、専用のホームページで受け付けて抽選販売とした。ネットの注文量がピークとなる新春の福袋商戦を予測して、注文の集中を避けつつも早々に「完売御礼」を出すなど、ネット通販ならではのリスク回避のノウハウを着実に蓄積しているようだ。18年も「ヨドバシ・ドット・コム」とアマゾンの戦いから目が離せない。(BCN・細田 立圭志)