8月24日に文部科学省から「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」の2022年度の認定・選定結果が発表されました。

そもそも、この制度はどのようなものなのでしょうか?
また、大学進学をする際にどの程度気にしなければいけないのでしょうか?
高校生の保護者としておさえておきたいポイントを解説します。

この記事のポイント

  • 「大学生全員がデータサイエンスを学ぶ」って、本当?
  • データサイエンスの学びは大学内だけにとどまらない
  • 高校での幅広い学びがデータサイエンス教育に直結する

「大学生全員がデータサイエンスを学ぶ」って、本当?

 これからの社会で、データとデジタル技術を活用したビジネスモデルの抜本的な変革(DX:デジタルトランスフォーメーション)を進めることが求められていることは保護者の皆さまもご存じのとおりです。

 そして、そのDXを担う人材として、「数理・データサイエンス・AI(人工知能)」を理解し、活用できる人材へのニーズが高まっています。その人材育成を目的として、大学でもデータサイエンスやAIが学べる学部・学科の新設が相次いでいます。

 さらには、すべての学部に対する「全学共通科目」としてデータサイエンスやAIの科目を設定し、必修とする大学も増えてきました。このような新しい学部・学科、科目などで、どのような教育が行われているのか、その教育のレベルが社会で求められる水準を満たすものであるのかも気になるところ。そこで注目したいのがこの「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」です。

 「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(Approved Program for Mathematics, Data science and AI Smart Higher Education、略称「MDASH(エムダッシュ)」、以降「MDASH」と記載します)」は、デジタル時代の「読み・書き・そろばん」ともいわれる「数理・データサイエンス・AI」の力を身に付けるため、大学(大学院を除く)や短期大学、高等専門学校で行われる数理データサイエンスに関する教育プログラムのうち、優れたものを政府が認定する制度のことです。

 2021年度にはまず「リテラシーレベル」として、数理・データサイエンス・AIへの関心を高め、活用するための基礎的な能力の育成プログラムに対する認定がスタートしました。今年度新たに認定されたものと合わせて、全国で217件、大学としては全大学の約20%にあたる162校が認定を受けています。

 さらに、今年度からは「応用基礎レベル」として、数理・データサイエンス・AIを活用して課題を解決するための実践的な能力を育成するプログラムの認定もスタートしました。こちらは、大学全体だけでなく、学部・学科単位の取り組みも対象となり、68件が認定を受けました。

 ところで、「数理・データサイエンス・AI」というと「理系の人にしか関係のない話」と思われがちですが、それは誤解です

 MDASHの「リテラシーレベル」は、大学・短大・高専卒業生の全員である50万人が身に付けることを目標としています。また、「応用基礎レベル」もその半数、25万人が身に付けることが目指されています。

 つまり、文系・理系を問わず、どのような大学・学部に進学するとしても、社会に出て活躍するための基礎的な力として身に付けることが期待されているのが数理・データサイエンス・AIに関する知識やスキルであり、それを育成するための教育を政府が後押ししている制度がMDASHである、ととらえることができるのです。

データサイエンスの学びは大学内だけにとどまらない

 では、このMDASHに認定される教育プログラムとは、どのようなものなのでしょうか。
まず「大学の正規の課程であること」「全学に開講されていること」「学生の関心を高め、体系的に修得できること」などの認定要件が定められています。さらに、それらをすべて満たしたうえで、「大学の特性に応じた特色ある取組が実施されている」として選定されるのが「リテラシーレベルプラス」「応用基礎レベルプラス」です。
興味があれば、下のリンクから、「各大学の特性に応じた特色ある取組」の欄を見てみてください。より具体的にどのような学び方をするのかが見えてきます。

「令和4年度「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」の認定・選定について」

 「プラス」は「大学の特性に応じた特色ある取組」ですので、当然どれも個性的なプログラムになっています。ただ、その中で「連携」が重視されているプログラムが目につきます。自治体や団体、企業などと「連携」して、匿名化されたデータなどの提供を受けながら、社会で起きている実際のテーマを扱っているものが多いのです。つまり、大学の中での学びだけにとどまらず、大学の外部とも「連携」しながら、実社会で応用・活用できる能力を育成しようとしています。

 実社会での応用・活用となると、「単独の学部・学科の専門知識」だけで解決できるテーマはほとんどなく、文理を問わない幅広い知識や教養が求められることが大半です。これが、MDASHの認定要件の中に「全学開講」が設定されていることの背景であり、どのような学部の学生であっても、少なくともリテラシーレベルまでは全員身に付けることが求められている理由であると言えます。

高校での幅広い学びがデータサイエンス教育に直結する

 それでは、そのような大学にこれから進学する高校生は、どのような学習をすることが求められるのでしょうか。高校1年生であれば、今年度から始まった「情報Ⅰ」が重要だと感じるかもしれません。もちろんそのとおりではあるのですが、それ「だけ」では不十分です。これまでも見てきたとおり、大学の外部とも連携しながら、実社会で応用・活用することを学ぶことになるので、「高校で準備されているすべての教科を、安易に捨てることなく学ぶ」という姿勢が重要です。

 とはいえ、教科の好き・嫌い、得意・苦手があるのは当然のこと。
そして、これからの時期、高校生は文理選択や選択科目登録の最終決定をすることになるので、保護者の皆さまのところにも相談が来るかもしれません。その際、昔のご自身の経験から「苦手教科は捨てて、得意教科に絞り込んで勝負すればよいのでは」と安易にアドバイスをするのは考えもの。「すべてを得意にしなくてもよいので、幅広く学んでみては」と応援してあげたほうが、MDASHをはじめとした大学入学後の教育プログラムで成長できる可能性を高めてあげることができるのではないでしょうか。

 近年、早稲田大学をはじめとした私立大学で、文系学部の入試でも数学を必須としたり、理数系の教科・科目を課す入試方式の募集人員を増やしたりするような動きが目立っています。これも、「入学してから成長できる可能性の高い学生に、より多く入学してほしい」という大学側の意思の表れでしょう。高校時代の教科・科目を幅広く学ぶことは、MDASHへの対応力を高めるだけでなく、入試でチャレンジできる機会を増やすことにもつながるのです。

まとめ & 実践 TIPS

 「数理・データサイエンス・AI」というと、特に文系の高校生にとっては近寄りがたいイメージが強いのですが、MDASHのプログラムを見ていくと、実社会で役立つイメージができて、ぐっと身近に感じることができます。大学での学びでどのようなことができるようになるのか、そのために高校でどのように学ぶことが必要なのかを考えるよい機会にもなりますので、保護者の皆さまからも、高校生にMDASHの教育プログラムを幅広くチェックするよう勧めてみてください。自分の志望校の意外な魅力に気づいたり、「こんな学びができるなら、この大学を目指してもよいかも」と新たな大学との出合いがあるかもしれません。