東京工業大学が、2024年度から順次、入試に「女子枠」を設けると発表しました。25年度までに募集人員の約14%を女子枠に充てたい考えです。女子枠は国立でも名古屋大学や富山大学が23年度入試からの導入を発表していますが、代表的な工業系単科大学で、東京医科歯科大学との法人統合(24年度)でも注目される東工大が導入するインパクトは大きいといえます。女子枠は、どういう意義を持っているのでしょうか。

この記事のポイント

  • 女子の割合を20%以上に
  • 目的は「多様性と包摂性」
  • 企業でも課題、政府審議会で提言相次ぐ

女子の割合を20%以上に

保護者世代にとって理系、とりわけ工業系は「男子向けの進学先」というイメージが強かったのではないでしょうか。そうしたイメージは、今も拭えていません。東工大も学士課程(学部)段階で、女子の割合は約13%にとどまっています。
対象となる入試区分は、総合型選抜(旧AO入試)と学校推薦型選抜(旧推薦入試)です。2024年度にまず4学院(学部に相当)で58人、25年度に残り2学院で85人の女子枠を新設。一般選抜(旧一般入試)での入学生も含め、各学院で女子の割合を20%以上に引き上げたい考えです。

目的は「多様性と包摂性」

女子枠について、益一哉学長はホームページ(HP)で「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」の取り組みだと説明しています。「多様性と包摂性」と訳されます。東工大では、多様な個性を持つ人々が対話し、教育・研究の現場で新たな考えや発想を生み出し、さまざまな社会課題を解決に導くD&Iを実現するとしています。
D&Iには人種や文化など、さまざまなものが含まれますが、性別は最たるものです。益学長も強調するように、かねて日本の大学では、理工系で学ぶ女子の割合が世界的に見ても低いことが指摘されていました。

企業でも課題、政府審議会で提言相次ぐ

D&Iは企業でも課題とされており、女性の社員や管理職を増やそうという動きが活発化しています。政府でも、イノベーション(革新)を起こすにはD&Iが不可欠だという認識が広がっており、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)や内閣官房の教育未来創造会議が、理工系を選択する女子の割合を増加させるよう、相次いで提言。文部科学相の諮問機関である中央教育審議会でも、次期教育振興基本計画(2023〜27年度)などにD&Iの考えを盛り込む方向で検討を進めています。

まとめ & 実践 TIPS

政府の各種会合では、女子の理系進学はもとより、男子も含めて「文理横断・融合」の必要性が強調されています。人工知能(AI)の発達をはじめとする数理・データサイエンスが、現代の教養として必須になると指摘されているからです。
そんな時代に、いつまでも文系・理系の別にこだわっている場合ではありませんし、ましてや「理系女子は就職に不利」などと昔のイメージを引きずっている場合でもありません。むしろD&Iの強力な推進役として、女子の理系進学を応援したいものです。

(筆者:渡辺 敦司)

東京工業大学が総合型・学校推薦型選抜で143人の「女子枠」を導入(東工大ホームページ)
https://admissions.titech.ac.jp/0/examination/news/2022/065277

中央教育審議会 教育振興基本計画部会(第11期〜)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo17/index.html