「うちの子、何をやるにも『自信がない』と言って、挑戦しようとしないんです。『大丈夫だから、やればできるから自信を持って!』と励ますんですけど、変わらないですね。どうしたらいいでしょうか?」

先日もこんなご質問をいただきました。保護者の方がお子さまを励ましたい、そのお気持ちは、とてもよく伝わってきます。ところが、その言葉かけそのものが、お子さまのチャレンジ意欲をくじいているとしたらどうでしょう?
「自信を持って!」と言われれば言われるほど、子どもは、ある価値観の枠にはまってしまいます。

「自信がない」があってもいい

これは、コーチングを学び続けて10年になるAさんの事例です。ある時、娘さんの友達Kちゃんが遊びに来ました。Kちゃんは、何事にも引っ込み思案で、日頃から悩みが多いタイプのようです。「うちのお母さんと話してみたらいいよ!」と、娘さんが家に連れてきました。

「あの、私、何をやるにも自信が持てないんです」と、Kちゃんは、Aさんに遠慮がちに話し始めました。
「どうなりたいの?」Aさんは質問しました。
「もっと自信を持てるようになりたいです」
「そう。自信を持てたらどうなるの?」
「何でもできるようになるかなって思うんです」
「本当に?」
「はい。いつも、母から『もっと自信を持って!』と言われていて、わかってはいるんですけど、どうしてもできないんです」
「今まで自信がなかったけど、やってみたらできた!っていうこと、何かある?」
「え?・・・別に何も」
「うちの子から聴いたんだけど、Kちゃんは読書感想文のコンクールで優勝したことがあるんだってね。すごいね!あの時は、自信満々で書いたの?」
「いえ、ぜんぜん!まったくなかったです」
「そうなんだ!じゃあ、自信がなくてもできていることが他にもあるんじゃないかな?」
「え?自信はなくてもいいんですか?」
「自信があってもなくても、やってきたことがいっぱいあるでしょう?」
「そうか!自信がないとダメなんだって思ってました」

Kちゃんのように、「自信を持って!」と言われ続けた結果、「自信がないとできない」という価値観の枠組みに縛られて、子どもはよけいに動けなくなってしまうのです。もちろん、「自信がある」ほうが、より前向きに行動できる子どもはいるでしょう。でも、「自信がない」「自信がないままやる」があってもいいのです。そのことに気づくだけでも、子どもの気持ちは軽くなります。

「自信」はやる前にはない

Aさんのコーチングはさらに続きます。
「ねえ、Kちゃん、今、絶対に自信があることって、どんなこと?」
「え?ないです。ぜんぜんない。ないことばっかりです」
「本当にそう?ないことのほうばかり見てるってことない?例えば、今日、迷子にならずに、おうちに帰れる自信ある?」
「そんなのはありますよ!」
「絶対に?」
「はい、絶対!」
「すごい!その自信はどこから来るの?」
「だって、毎日、帰ってるし。そんなことに自信があるとかないとかあんまり考えないです」
「だよね。やったことがあること、いつもやっていることは、自信があるとかないとか考えないでやってるよね。でも、もっと小さかった頃、初めて『一人で帰っておいで』って言われた時は、ちょっと怖いって思ったかもしれないよ。自信は何かをやる前には、決してないものだと思うよ。やった後にしか感じられないんじゃないかな」
「なるほど〜!最初に、怖いと思うのは普通なんですよね。ありがとうございます!うちのお母さんにも、この話をしてあげよう!」

Aさんのような対話をしてくれる大人がそばにいるだけで、「自信がない」気持ちを受けとめ、挑戦できる子どもがもっと増えていくのではないかと思います。