お子さまの小学校入学や進級で、親子とも新生活の準備に慌ただしい時期ですね。
発達障害のお子さまの保護者様の中には、「新しい環境に子どもが馴染めるか心配」「何を準備すればよいのかわからない」と不安を抱えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。そこで、特別支援教育の第一人者である小池敏英先生 (尚絅学院大学教授)に、『入学・進級に向けて、家庭で取り組んでおくとよいこと』について、お話を伺いました。

※本記事では、一般的な見解をご紹介しています。お子さまの発達状況や、学習レベル、地域や学校によって対応はさまざまですので、詳しくはお子さまの入学・進級される学校や園にご確認ください。

この記事のポイント

  • —発達障害のお子さまを持つ保護者が、入学・進級前にやっておくとよい事は?
  • —発達障害の特性をふまえて、学習面で準備しておくとよい事は?
  • —発達障害のお子さまが新しい環境に慣れるために、保護者は何をすればよい?

—発達障害のお子さまを持つ保護者が、入学・進級前にやっておくとよい事は?

まずは、今のお子さまの「できないこと・苦手なこと」の状況を保護者がしっかり把握し、それを入学・進級先に伝えられるよう準備しておきましょう。例えば、「じっと座っていることが苦手」「緊張すると、落ち着いていられない」といった内容です。

その際、「できないこと」だけを伝えるのではなく、「こうすればできる」という条件まで整理しておくとよいでしょう。例えば、「15分以内なら、じっと座っていられる」「周りにいる人が5人以下の環境なら、落ち着いていられる」という風に、日頃保護者のかたが意識している工夫を、担任や学校・園側としっかり共有しておくことが大切です。そうすることで、お子さまが「できる状態」を周囲がサポートしやすくなります。

—発達障害の特性をふまえて、学習面で準備しておくとよい事は?

語彙が苦手なお子様は、「た抜き言葉」「カルタ」などの言葉遊びに日頃から取り組んでおくのがおすすめです。

「た抜き言葉」とは?

「たぬきから"た"を取ると何になる?」「いるかから”る”を取ると何になる?」という風に、お子さまになぞなぞのように問いかけてみる遊びです。いきなり3文字が難しければ、2文字の簡単な言葉から始めて、少しずつ文字数を増やしていきましょう。

「カルタ」遊びとは?

ひらがなが1文字ずつ書かれたカードを使い、知っている言葉を一緒に組み立てていく遊びです。例えば犬の絵を一緒に見せながら「い」「ぬ」のカードを見せて、「いぬの"い"だね」という風に教えます。絵とセットで教えることで、語彙の定着が深まりやすくなります。2文字の簡単な言葉から始めていきましょう。

これらは時間をかけて繰り返すことで、徐々に言葉の定着につながっていきます。ほかにも、「しりとり」は語彙力を高めるだけでなく、親子のコミュニケーションにもつながるのでおすすめです。

—発達障害のお子さまが新しい環境に慣れるために、保護者は何をすればよい?

これから新しい生活が始まれば、保護者の方は今まで以上に苦労が増えるかもしれません。心配なことはできるだけ担任や学校・園に伝え、皆で一緒にお子さまをサポートしていく環境を作っていきましょう。保護者だけで負担を抱えこまないことが重要です。

また、思うようにいかない時は、一度やり方や環境を変えてみましょう。例えば、語彙の練習があまり進まなくなってきたら、うんとハードルを下げたところから再び始めてみてください。どんなに小さなことでもよいので、お子さまが「できる状況」に誘導してあげましょう。親子共に達成感を得ることが、日々の自信につながっていきます。

それでも大変に感じてしまう時は、「親」として向き合うのではなく子どもの「支援者」や「学習パートナー」になりきってみるのもおすすめです。実際、発達障害のお子さまを支援する現場では、『一般の基準に子どもを当てはめない』『その子のペースで、できることを認めていく』という考え方があります。保護者のかたも同様に「できる状況」を大切にしてお子さまと接してみることで、心の持ち方が少し変わるかもしれません。

まとめ & 実践 TIPS

これから新生活が始まると、お子さまにとっても慣れるまでの苦労があるかもしれません。日々の生活においては、どんな些細なことでもよいので「できた体験」を積ませ、”うまくいったね”と言葉でたくさん伝えてあげましょう。それがお子さまの自信となり、親子の信頼関係にもつながります。
保護者の方もあまり気負い過ぎず、周囲と一緒になって、お子さまの新しい生活をサポートしていけるとよいですね。

プロフィール

小池敏英(こいけ としひで)

尚絅学院大学 教授 東京学芸大学大学院 教育学研究科修士課程、東北大学教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。東京学芸大学教育学部 教授を経て2019年4月より現職。
研究課題は「学習障害児の認知評価と学習支援、発達障害児のコミュニケーション支援」著書に『LDの子の読み書き支援がわかる本』(2016)講談社、『読解力を育む発達支援教材』(2010)(監修 学研教育みらい)、『LD児のためのひらがな・漢字支援』(2003) (編 あいり出版)など。