乳幼児期の子どものアタッチメント形成は、「学びに向かう力」を育成する土台になるなど非常に重要です。子どもが不安や恐れを感じたときに保護者がその気持ちに気づいて抱きしめたり温かく声かけをしてなぐさめたりする日常的な関わりによって、アタッチメントは形成されます。ベネッセ教育総合研究所の李 知苑からアタッチメントの重要性と、それを形成する子どもへの接し方について話を聞きました。

この記事のポイント

  • 乳幼児期の親子のアタッチメントが大事
  • 家庭でできるアタッチメント形成方法とは?
  • ポジティブな養育行動をすることでアタッチメントを形成する

乳幼児期の親子のアタッチメントが大事

子どもと養育者の間の情緒的なつながりを「アタッチメント」と呼びます。ベネッセ教育総合研究所と東京大学Cedepの共同研究の調査から、このアタッチメントが子どもの成長においてとても重要だということがわかりました。

同研究では、同じ子どもを0歳児期から3歳児期まで追跡して調査しています。この結果からは、0歳からのアタッチメントが、非認知スキルともいわれる「学びに向かう力」の育成につながっていくことがわかりました。

子どもが不安などネガティブな感情を抱いたときに、保護者がその気持ちに気づいて子どもをなだめてあげることで、子どもはそのネガティブな感情を調整できるようになります。子どもを抱きしめる、声かけをする、話を聞くなど保護者の日常的なポジティブな養育行動の繰り返しが、アタッチメントの形成につながります。

そして、乳幼児期にアタッチメントを形成することで自分や周りの人に対して、「自分は守られている」「自分は愛されている存在だ」という安心感を得ることができます。アタッチメントは、親子関係を良好にするだけでなく、今後の対人関係に好影響を与えていくのです。そして、アタッチメントこそ、好奇心、協調性、がんばる力、自己抑制、自己主張などの「学びに向かう力」の土台となっていくものなのです。

家庭でできるアタッチメント形成方法とは?

アタッチメント形成につながる家庭での子どもの接し方についてお伝えしましょう。実は、基本的には、多くの保護者のかたが日々お子さまと接しているようなコミュニケーションがとても大切なのです。

例えば、子どもが泣き出したら「どうしたの?」と寄り添うこと。あるいは、転んでしまったら「痛かったね」と子どもの気持ちに共感してなぐさめてあげること。そうした、子どもとの心の通い合いにより、アタッチメントが形成されます。特別なことは、ありませんよね?

アタッチメント形成につながる保護者の役割は大きく2つあります。

1つめは、保護者のかたが「安全な避難所」になることです。子どもが怖さや不安を感じた時に、保護者がその気持ちに寄り添い、落ち着かせてあげることによって、子どもの心は安定します。不安や恐怖から逃れられる安全な場所となるのです。
2つめは、「安心の基地」になることです。「安全な避難所」でホッとした子どもは、保護者を「基地」にして、再び保護者の元を離れて遊びや探索に出ていき、そこでさまざまな経験を深めていくことができるのです。それが「学びに向かう力」を育てることにつながります。

「安全な避難所」と「安心の基地」は、別々の役割というわけではなく、関連するものです。そして、どちらも日頃、保護者のかたが意識せずにお子さまに行っていることではないでしょうか。

ポジティブな養育行動をすることでアタッチメントを形成する

同研究では、アタッチメント形成につながる保護者のポジティブな養育行動として「あたたかさ」「敏感さ」「やりとり遊び」「意欲の尊重」が重要であることがわかっています。
それぞれについて、説明しましょう。

「あたたかさ」とは、例えば、抱きしめたりくすぐったりといったスキンシップや、「かわいいね」「すごいね」など言葉による声かけもこれにあたります。また、怖がっているときに安心させたりうまくできた時に一緒に喜んだりすることもポジティブな養育行動だといえます。

「敏感さ」とは、ぐずった時に理由をわかろうとしたり子どもが何を欲しているのかを察しようとしたりする保護者の接し方のことを指します。子どもの様子に常に敏感である必要はなく、子どもが怖さや不安を感じたときに保護者がその気持ちを立て直してあげることが大切です。

「やりとり遊び」は親子でコミュニケーションをしながら、一緒に遊ぶことです。絵本を読み聞かせたり子どもの好きな童謡を一緒に歌ったりするなど、日常的な関わりを指します。

「意欲の尊重」は、危険なこと以外、基本的には子どもがしたいことを最後まで見守る姿勢をいいます。子どもの興味が広がるような遊びや体験を用意したり、したいことに取り組める環境を用意したりすることもこれに当たります。

こうしたポジティブな養育行動が、アタッチメントの形成に関わることが研究から明らかになりました。そして、ポジティブな養育行動とアタッチメントは、相互に関わり合いながら形成されていくこともわかっています。

日頃から保護者のかたがお子さまの様子に応じて関わっていることが、お子さまの発達にとって大切な意味をもっているのです。重要なのは、保護者の方が先にいろいろやってあげるのではなく、お子さまが必要としたときにそれに気づいてあたたかく接することです。ぜひこれからも意識して取り組んでみてください。

なお、アタッチメントは、母親だけでなく、父親や祖父母、保育園の先生などとの間でも形成されることがわかっています。さまざまな大人が子どもと接する「チーム育児」を実現していくことで、子どもの成長を支えていくことができるとよいですね。

まとめ & 実践 TIPS

乳幼児期のアタッチメント形成は、非認知スキルともいわれる「学びに向かう力」の土台となります。アタッチメントが形成されることで自己肯定感や他者への基本的な信頼感が育まれます。
アタッチメントは、保護者が「安全な避難所」や「安心の基地」の役割を果たし、ポジティブな養育行動をすることで形成されます。ポジティブな養育行動とは、「あたたかさ」「敏感さ」「やりとり遊び」「意欲の尊重」といった接し方のことです。抱きしめたりぐずった理由をわかろうとしたり子どもが「(この遊びを)やってみたい!」と思える環境を用意したりといった日常的な関わりを通して、アタッチメントを形成していきましょう。

出典
「乳幼児の生活と育ちに関する調査」
https://berd.benesse.jp/jisedai/research/detail1.php?id=5290

ベネッセ教育総合研究所の教育研究知見を元にした子育て・学びに関する記事の一覧
https://benesse.jp/special/berd.html

プロフィール

李 知苑

ベネッセ教育総合研究所 学び・生活研究室 研究員。ICTと子どもの学びや発達との関連,親子関係,子どもの社会情動的発達等に関心を持って研究に携わっている。専門は教育心理学、発達心理学。