小さいころからさまざまな体験をしてほしいと、お子さんに習い事をさせる家庭は少なくないことでしょう。経済産業省のシンクタンク「経済産業研究所」の研究プロジェクトは、課外・学校外で運動や音楽を経験した人ほど、将来の学歴や収入が高くなるという結果を公表しました。ただし、いろいろ考えなければならないことは多そうです。

この記事のポイント

  • 「非認知能力」が成績も伸ばす
  • 何を習わせるか自体に家庭背景
  • 広がる「格差」も視野に

「非認知能力」が成績も伸ばす

研究に当たっては、2019年3月に行った調査データを用いました。インターネット調査会社のモニターから、全国25〜59歳の男女6,000人の回答を集めたものです。
分析の結果、小学校時代に運動(水泳・球技・武道・体操・舞踊など)か音楽(楽器演奏・コーラスなど)を経験した人ほど、学校の成績が良く、現在の収入(時給換算)も高いというのです。
これは、忍耐力・意欲・社会性・創造性など、テストでは測れない「非認知能力」が育つからだとされています。

何を習わせるか自体に家庭背景

ところで、なぜ経産省の研究所? と思った読者もいるでしょう。研究は、「教育経済学」という経済学の一分野の手法を使っています。研究目的も、保護者がどう効果的に「教育投資」を行うかを探るものです。
習い事といえば、月謝などは決して安くありません。教室などに通うには、送迎など保護者のサポートも必要になります。
そもそもバレエやバイオリンを習わせること自体、保護者の意向が強く働いたものが多いでしょう。実際、運動や音楽の経験には、特に父親の学歴が影響していたといいます。運動の選択には交友関係や地域行事への参加といった「社会関係資本」が、音楽の選択には暮らし向きや読書経験といった「文化資本」も関係していました。

広がる「格差」も視野に

ただ近年、経済格差の広がりとともに、子どもに習い事を複数させられる家庭から、一つも習わせることができない家庭まで、「教育格差」が生じていることも心配されています。
一方、学校教育でも、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」だけでなく「学びに向かう力・人間性等」など、いわゆる非認知能力も含めた幅広い資質・能力を育もうとしています。
中学校からの部活動は、顧問となる先生の多忙化から、段階的に地域へと移行することも検討されています。しかし部活動が、少ない費用負担で生徒に多様な経験をさせ、非認知能力を伸ばしてきた側面も否めません。

まとめ & 実践 TIPS

現代社会は人工知能(AI)の時代を迎えるなど、働く人にも昔より高度な能力が求められます。チームで成果を上げる必要にも迫られていることは、むしろ保護者の方々が実感していることでしょう。
少子高齢化で、ますます一人ひとりに社会を支えてもらわなければならない時代。家庭教育任せにするばかりでなく、学校教育や社会教育も含め、社会全体でどう子どもの力を伸ばしていくかを真剣に考えなければならない時期に来ています。

(筆者:渡辺 敦司)

小学校時代の課外・学校外活動と学業、非認知能力、将来の成果との関係—運動と音楽の選択に着目して
https://www.rieti.go.jp/jp/publications/nts/22j030.html