文部科学省の有識者会議は、工学系の学部と大学院修士課程との6年一貫教育の創設を柱とする中間報告をまとめました。注目されるのは専門性とともに多様性にも対応できる人材育成を求めて「主専攻・副専攻(メジャー・マイナー制)」などを打ち出していることです。多様な人材育成が今後求められるなかで、このような考え方は、工学系以外の学部にも広がる可能性も予想されます。

一つのことを深く学ぶモデルから転換

ものづくりを中心とする日本の工学系教育は、これまで大きな成果を挙げてきました。しかし中間報告は、明治以来の「1つの分野を深く学ぶモデル」が工学系教育で維持されてきたため、「第4次産業革命」や「超スマート社会」と言われる、これからの時代や社会の基盤を創造する人材が育成できないという危機感を表明しています。そして、これからは「スペシャリストとしての専門の深い知識と同時に、分野の多様性を理解し、他者との協調の下、異分野との融合・学際領域の推進も見据えることができるジェネラリストとしての幅広い知識・俯瞰(ふかん)的視野を持つ人材」を育成することが重要であるとしています。

このため専門分野ごとに縦割りになっている工学系教育を見直し、学部と大学院修士課程による6年間一貫の「工学・情報大学院」(仮称)の創設を提言しています。6年一貫で十分な学習時間を確保することで、柔軟なカリキュラムを組み、深い専門性とともに他分野の幅広い教養・知識を持つ人材を育成することが狙いです。

このため、現行では学部(大学)・専攻(大学院)ごとに決まっている学生定員の制度を柔軟化させる必要があるとしています。現在でも工学部の修士課程進学率は国立大学では50%程度となっており、今後、さらに工学部の大学院修士課程への進学率が上昇することになりそうです。

専門性と同時に他分野の知識・教養も重視

また中間報告は、深い専門性と同時に他分野にも関心を示し、他分野の人々と協働できる人材を育成するため「主専攻・副専攻(メジャー・マイナー制)」の導入が必要であると強調しています。メジャー・マイナー制とは、専門である主専攻と同時に、他分野を副専攻として学ぶというものです。

専門以外の分野を学ぶ副専攻は、一見、非効率なようですが、これからの時代に求められるのは、自分の専門以外には興味がないという人間ではありません。副専攻は、専門性とともにさまざまな分野にも関心や興味を持つ学際的・融合的な研究ができる人材を育てるためには欠かせないものです。

現在でもリベラルアーツ系の学部などで、メジャー・マイナー制を採用しているところがありますが、人工知能(AI)などが急速に発達する社会では、メジャー・マイナー制や複数の主専攻を学ぶ「ダブル・メジャー制」などによるカリキュラムを組む大学が増えることになるでしょう。

この他、中間報告は、産学連携による教育効果を狙って企業などでの就職活動を目的としない数か月間のインターンシップ(企業実習)を必修化することなども提言しています。
これから工学系、特に国立大学の工学系教育では、修士課程を含めた6年一貫教育が主流になりそうです。

※「大学における工学系教育の在り方について(中間まとめ)」について
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/081/gaiyou/1387267.htm

(筆者:斎藤剛史)