直島では小学校、中学校の教育課程で現代アートを鑑賞する時間が設けられており、段階的に島の中にある作品と触れあう機会が提供されています。昨年11月には、直島小学校6年生が李禹煥美術館でのワークを通じて、現代アートの楽しみ方を学びました。今回は、2021年3月に直島中学校1年生を対象に行われた、地中美術館での光のワークショップをご紹介します。

この記事のポイント

  • 地中美術館ってどんなところ?
  • 観る・話す:対話を通じて得られる視点
  • 表現する:自由な発想、表現を楽しむ
  • 解釈は無限大!現代アートとの向き合い方

地中美術館ってどんなところ?

地中美術館は「自然と人間の関係を考える場所」というコンセプトのもと、2004年に開館しました。安藤忠雄が設計した建築の中にはクロード・モネ、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・タレルの作品が恒久展示されています。展示空間は各作家の作品に合わせて設計されているため、空間全体を作品として鑑賞できるのが特徴です。また、建築には自然光が取り入れられており、内部に降り注ぐ光は季節や時間帯によって作品や空間の表情の変化を生み出しています。

地中美術館 写真:大沢誠一

観る・話す:対話を通じて得られる視点

3月に実施したワークショップではジェームズ・タレルの作品を取り上げ、絵画や彫刻に留まらないアート作品の在り方や、自由な発想、表現する楽しさを体験してもらいました。

地中美術館の作品には「光」が共通のテーマとして存在しています。その中でも、ジェームズ・タレルは作品を通して光そのものの見せ方や、私たちが光をどう認識するかを問うています。

ジェームズ・タレル「アフラム、ペール・ブルー」1968 写真:藤塚光政

作品を前に、「何に見える?もし触れたらどんな感触だと思う?近づいてみたら?角度を変えてみたらどう?」といった切り口から問いを投げかけると、「立体に見える」、「冷たい感じ」、「弾力がありそう」、「近づいたら平面に見える」など生徒から活発に意見が出ました。

ジェームズ・タレル「オープン・スカイ」2004写真:畠山直哉

同じ作品を鑑賞していても、人によって気になるところや見ている視点は異なります。今回参加した生徒は、作品を観て感じたこと、思ったことを積極的に発言することでそれぞれの視点を共有し、自然と解釈の幅を広げていくことで、「思考力」や「共感力」を育んでいきます。作品とじっくり向き合い、互いに感想や印象を言葉にしあうことで、ひとりでは気づかないような多様な解釈を知り、作品の見方や楽しみ方がぐっと広がります。

表現する:自由な発想、表現を楽しむ

作品を鑑賞し、様々な解釈に触れたあとはジェームズ・タレルという作家について学びます。タレルは「知覚心理学」を学んでいたり、パイロットとして飛行経験があったり、アーティスト以外の活動が作品や作風に影響を与えているといわれています。また、タレルのほかの作品を観ることで、彼が何を表現しようとしていたのか、想像力を働かせながら思いを巡らせます。

作家について学んだ後、台紙を好きな形に切り、カラーセロファンを自由に貼り付け、光を当てて壁に投影するワークをしました。生徒たちはこれまでのワークで得た自由な発想を活かしながら、「上手、下手」ではなく、自分の好きなように制作し表現する楽しさを体験します。

完成した作品は壁に投影し、タイトルをつけて発表し合います。食べ物、直島の風景、ふと目に入ってきた景色をモチーフにしたり、様々な形を組み合わせたり、切り取る形を工夫する生徒もいれば、カラーセロファンを重ねて色の表現に力を入れるなど、表現方法は様々です。タイトルには「ふとした景色」、「非対称」など、制作過程での気づきや作品に込めようとした思いが表れており、作品鑑賞から表現するプロセスの中で自ずと豊かな発想や表現力が磨かれているといえるでしょう。また、ほかの生徒の発表にうなずいたり、「おお!」と反応したり、多様性を受け入れ、正解がない表現を楽しむ姿勢も育まれていきます。

解釈は無限大!現代アートとの向き合い方

現代アートは解釈に正解がなく、自由な発想で鑑賞できるのが特徴です。今回取り上げたジェームズ・タレルのように日常にある「光」という身近なものを扱う作品など、現代アートの素材や表現方法は多岐にわたり、視覚から抱く印象や、音、匂い、触感など五感を使った解釈まで、鑑賞を深めるきっかけはたくさんあります。様々な視点から観るだけでなく、今回参加した生徒のように、さらに自分の印象や解釈をほかの人と共有しあうことで、最初に得た鑑賞体験の幅は何倍にも広げることができます。自由に観て、作品から得られる世界を広げる楽しさを、ぜひ体験してみてはいかがでしょうか。