近年、幼児教育では「学びに向かう力」が注目されています。この「学びに向かう力」は小学校以降の教育でも重視され、これからの社会で生きていく上で大切な力とされています。では、「学びに向かう力」とはそもそもどのような力なのでしょう。そして、家庭の中でどのように育んでいくとよいのでしょうか。ベネッセ教育総合研究所の高岡純子が、縦断研究から見えた「学びに向かう力」の育ち方についてお伝えします。

この記事のポイント

  • これからの時代に生きる子どもたちに必要な「学びに向かう力」とは?
  • 幼児期の「学びに向かう力」はその後の言葉の力や論理力につながっている
  • 家庭で「学びに向かう力」を育むには?

これからの時代に生きる子どもたちに必要な「学びに向かう力」とは?

近年、数量や文字・言葉などの認知的能力に加えて、好奇心や協調性、がんばる力などの「学びに向かう力」の大切さが明らかになってきました。この力は、認知的能力ではないスキルとして非認知スキルとも呼ばれています。「学びに向かう力」は、特に幼児期に伸びていきますが、その後もいつからでも伸ばすことができる力です。

こうした「学びに向かう力」は、幼稚園教育要領や保育所保育指針等、小中高校の新学習指導要領において、新しい時代に必要になる資質能力のひとつとして位置付けられています。2020年度から小学校でスタートした新学習指導要領では、「生きて働く知識・技能」や「未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成」と並び、3本柱の1つとされているのです。

幼児期の「学びに向かう力」はその後の言葉の力や論理力につながっている

ベネッセ教育総合研究所では、3歳から小学校6年生まで同じお子さまの成長を追った縦断研究を実施。その結果から、幼児期に育まれたがんばる力などの「学びに向かう力」や生活習慣が、小学校低学年での「大人に言われなくても自分から進んで勉強する」といった能動的な学習態度につながっていることがわかりました。さらに、小学校高学年になると、言葉の力や思考力にもつながることが見えてきました。

「学びに向かう力」を幼児期に育むことで、文字・数・思考などの学習、いわゆる認知スキルの向上につながることがわかったのです。また、自律的に学んでいくために欠かせない学習態度の育成にも関連する重要な力であることが明らかになりました。

家庭で「学びに向かう力」を育むには?

この研究からは、保護者の「子どもの意欲を尊重すること」「自分で考えられるように上手に促すこと」「学びの環境を整えること」などが、「学びに向かう力」と関連性があることがわかりました。ここでは、ご家庭でできる具体的な活動をご紹介しましょう。

・一緒に絵本を読んだり数をかぞえたりする

子どもは保護者のことが大好きです。そのため、一緒にやりとりをして楽しむことがキーワードになります。寝る前の絵本の読み聞かせやお風呂の中で一緒に数を数えることなどは有効な活動です。お忙しい保護者のかたも多いと思いますが、1日5分でも10分でもこうした子どもと一緒に楽しめる時間をつくれるとよいですね。

・子どもが試行錯誤する姿を見守る

大人がすぐに手を貸すのではなく、子どもが試行錯誤している時間を大切にしましょう。あきらめずに挑戦したり工夫して遊んだりする経験が、子どもの意欲を育みます。納得するまで子どもにやらせてみることが大切です。
子どもが困っていたら、ちょっとした手がかりや考えが深まるようなヒントを与えてあげましょう。

・体験について親子で話し合う

一緒にでかけた後に「おもしろかったことはある?」と尋ねたり、体験後に「どんなことを思った?」と声かけをしたりなど、親子でのやりとりを楽しむとよいでしょう。
また、一つのおもちゃでも多様な遊び方があることに気付かせることで、遊びの幅を広げていくことができます。「こんなこともできるね」「これも楽しいね」などと親子でのやりとりをしながら楽しんでみてください。

子どもとの接し方を工夫することで、「学びに向かう力」を伸ばし、結果として思考力や認知スキルにつながるような土台を作っていくことができるとよいですね。

まとめ & 実践 TIPS

「学びに向かう力」とは、好奇心や協調性、がんばる力などを指します。数量や文字・言葉などの認知スキルとは異なる力であり、非認知スキルとも呼ばれています。
幼児期に育んだ「学びに向かう力」が、小学校段階の能動的な学習態度につながります。さらに、「学びに向かう力」は高学年の言葉の力や思考力にも関連することが見えてきました。
「学びに向かう力」を育むためには、子どものやりたいことを尊重し、自分で考えられるように上手に促すような関わりが大切です。
また、幼児期における親子でのやりとり遊びや絵本の読み聞かせも意欲を育むのに効果的です。

≪参考≫
・「幼児期から小学生の家庭教育調査・縦断調査」
https://berd.benesse.jp/up_images/publicity/press_release_20190225_.pdf

・ベネッセ教育総合研究所の教育研究知見を元にした子育て・学びに関する記事の一覧はこちら
https://benesse.jp/special/berd.html

プロフィール

高岡 純子

ベネッセ教育総合研究所 学び・生活研究室 室長。乳幼児領域を中心に、子ども、保護者、園・学校を対象とした意識や実態の調査研究、発達成長に関する縦断研究、乳幼児とメディアの研究などに携わる。