埼玉県の公立小学校教員が残業代支払いを県に求めた訴訟で2021年10月1日にあった、さいたま地裁の判決が反響を呼んでいます。損害賠償請求は棄却したものの、公立学校の先生の給与制度自体が「もはや教育現場の実情に適合していない」として、勤務環境の改善を要望したのです。

先生が多忙であることについては理解が広がっていますが、「定額働かせ放題」とも言われる給与体系の見直しは、まだまだ先になりそうです。先生の働き方は、どうなっているのでしょうか。

この記事のポイント

  • 残業代の代わりに一律4%分を支給
  • 50年以上も前の基準で算定、実態に合わず
  • 2022年度調査までは各地の努力に任され

残業代の代わりに一律4%分を支給

公立小中学校の先生の給与は、全国的な水準を確保するため、国が3分の1、都道府県・指定都市が3分の2を負担しています(2005年度までは2分の1ずつ)。一般公務員に比べて優遇される一方、子どもの成長に関わる先生の仕事には「自発性、創造性」が求められることから、単純に時間では測れないものとされ、超過勤務手当(残業代)は支給されてきませんでした。
その代わりに、「教職特別手当」というものが支給されています。俸給月額の4%相当を「教職調整額」として、一律に上乗せするものです。
一方で、校長が時間外労働を命じることができるのは(1)生徒の実習(2)学校行事(3)職員会議(4)非常災害など……の4項目に限ることで、超過勤務に一応の歯止めを掛けています。

50年以上も前の基準で算定、実態に合わず

ただし、この「4%」という割合は、今から50年以上も前の1966年、文部省(当時)が行った教員勤務実態調査を基に算定したものです。その時の年間ベースの1か月当たり残業時間は、約8時間でした。それが2006年度、40年ぶりに行われた調査では約42時間と、5倍以上になっていました。さらに2016年度、時期を限定して調査が行われた調査では、少なくとも10年前より悪化したことが明らかになっています。

そんな状況を受けて、中央教育審議会(中教審、文部科学省の諮問機関)では、学校の働き方改革を審議しました。その過程で文部科学省は、もし勤務実態に見合った教職調整額を先生方に支払うとしたら、国と地方を合わせて9,000億円以上の追加費用が必要だとの試算を示しています。

2022年度調査までは各地の努力に任され

先生方の働き方をめぐっては、2019年1月の中教審答申とガイドラインに基づいて、改革の努力が各地で進行しています。その上で2022年度に改めて勤務実態調査を行い、次の改革を改めて検討することにしていました。
そんなさなかに出された、今回の地裁判決。当時の萩生田光一文部科学大臣も、10月4日の退任会見で「改善の必要があると司法から求められたことは重く受け止めたい」と述べていました。

まとめ & 実践 TIPS

先生の勤務環境を改善することは、一人ひとりの子どもに寄り添って手厚い指導や支援をしてもらうためにも、不可欠です。新しい政権にも、真剣に取り組んでもらいたい課題の一つだと言えるでしょう。

中央教育審議会答申「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(2019年1月)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/079/sonota/1412985.htm

中教審「学校における働き方改革特別部会」第8回(2017年11月)議事録
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/079/siryo/1402618.htm