岸田文雄首相を議長とする政府の「教育未来創造会議」は2022年5月10日、これからの大学と社会の在り方に対する第一次提言を取りまとめました。提言では、理工農系を専攻する女子学生の割合を、男子学生と同等の28%程度にすることなどを示しました。今後、理系を目指す女子には、どのような環境が必要なのでしょうか。

この記事のポイント

  • 進学増に取り組む大学を支援
  • 「文系」勧める固定観念からの脱却を
  • 幼少期の体験、地域差が課題

進学増に取り組む大学を支援

提言では、教育と労働のジェンダー(社会的性差)の不平等の悪循環を断ち切り、大学等における教育を通じて、女性が経済的に自立し、自らの意思で個性と能力を十分に発揮して活躍できるようにすることを掲げています。特に、新たなイノベーション(革新)の創出に向けて、中学・高校での理数教育の充実に加え、理系を学ぶ女性を増やすプログラムの強化を図り、女子中高生の理系選択が増えるように取り組みを推進するとしています。
具体的には、▽理工農系の女子学生が増える取り組みに積極的な大学を支援する▽大学教員の出産や育児と研究活動の両立を支援する施策を充実させる▽官民共同で理工農系に進学する女子学生を支援するプログラムを作る▽大学の出前講座や、ロールモデル(模範)に出会う機会を充実させる……などの改革事項を示しています。

「文系」勧める固定観念からの脱却を

提言を受けて、末松信介文部科学相も声明を発表しました。高い理数系の学力がありながら、理系を選択する割合が、男子27%に対して、女子が16%にとどまっている現状を解決するため、大学関係者のみならず、保護者や学校教職員、企業に向けてそれぞれが努力するよう呼び掛けました。
保護者に対しては「女子は文系」といった固定観念から離れ、子どもたちの幅広い進路選択を支えることを、小中高校の教職員には、早期から文系・理系に分ける「文理分断」教育を脱却することや、学校における男女に違いに基づく先入観を徹底的に排除することを求めています。

幼少期の体験、地域差が課題

女性の理工系分野への進路選択に影響を与える要因について、内閣府が高校生4,594人を対象にアンケート調査を行ったところ、女性の理工学部志望者は、▽数学や物理が好きで、幼少期の科学館・博物館体験や大学や自治体のイベント等、理系的経験が多い▽就職や転職に有利、将来の高い収入など、理科学習に対する動機付けが高い▽保護者も理工系を専攻していた割合が高く、理系に対する前向きなイメージがある……などが浮かび上がりました。幼少期の理系的経験は、人口5万人未満の地域で少なく、理工系に対する興味を深める機会が不足していることもわかりました。

まとめ & 実践 TIPS

女子の理工系の進路を後押しするためには、学校教育での取り組みや大学のプログラム、大人の意識改革だけでは十分とはいえません。地域の社会経済状況を考慮して、幼少期から理系に親しむ機会の増加と参加のしやすさを、全国で向上させることが必要です。

(筆者:長尾 康子)

※教育未来創造会議 「我が国の未来をけん引する大学等と社会の在り方について(第一次提言)」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kyouikumirai/teigen.html

※内閣府 理工チャレンジ(リコチャレ)
https://www.gender.go.jp/c-challenge/materials/index.html