「被害を恥じるようなことだと思っていない。被害者が特殊で弱々しい人間ではなく、一人の人間として知ってもらいたい」

今年9月、フリーランスが受けているハラスメントの実態について記者会見が開かれた。そこで、ハラスメント被害者の一人として、顔と名前を出して同業者からレイプを受けた経験を話した女性がいた。東京都在住の八幡真弓さんだ。

これまで友人や知人に被害経験を話したことはあったが、多くのメディアの前で話すのは初めてだった。会見からおよそ2カ月、八幡さんに改めて話を聞いた。

●「被害体験を普通に話せる世の中に」

八幡さんが同じ映像制作業界の男性から性暴力を受けたのは、10年ほど前のこと。起業して1年目だった。

「被害にあっていることを周りに知られたら、私の会社が潰れてしまう」。被害は数カ月にわたったが、その間も仕事を続けた。がむしゃらになって、気持ちを奮い立たせるしかなかった。

時間がたてば立つほど、「今更誰にも信じてもらえないだろう」という思いを強めた。別業界で働いたり休んだりしていたが、数年前、ついに体が悲鳴をあげた。精神科で「複雑性PTSD」と診断され、しばらく仕事を休んで療養した。

9月の会見で自分の体験を話す決断をしたのは「リスクに怯んだら、被害体験を普通に話せる世の中が作れない」と思ったからだ。加えて、いまの社会にある「被害者」のイメージも変えたかった。

被害者は涙を流さないといけないのか。常に落ち込んでいなければいけないのか。これまでにもさまざまな性暴力被害者が、メディアなどで自身の体験を話してきた。それでも「被害者」のイメージが変わらないなら、自分もそこに加わって「語りを積んでいくしかない」と思った。

感情が高ぶって涙がこぼれたとしても、取り乱すことはしたくなかった。会見の日は、黒い服は避け、話すときはうつむかず元気に話すようにした。会見をみた友人からは「ずっとあごが上がっていたね」とねぎらわれた。

「被害経験を気軽に言えなければ、それは社会に黙らされていることになる。声をあげることも、あげないことも、自由に選べる社会になってほしい」