預けたパスポートを返してもらえないとして、神奈川県在住のフィリピン人女性(30代)が、勤め先だった行政書士事務所を相手取り、パスポートの返還と慰謝料などをもとめて横浜地裁に提訴した。提訴は1月16日付。

●パスポートを預ける契約を結ばされた

訴状などによると、女性は2017年4月来日して、2019年5月から横浜市内にある「アドバンスコンサル行政書士事務所」で、アルバイト(のちに契約社員)として働きはじめた。

入社時にパスポートや卒業証明書、優良証明書を預けるという「契約」を結ばされた。労働条件に疑問を抱いて、同年7月、退職とパスポートなどの返還をもとめたが、同事務所は「契約」をたてに、いずれも拒否したという。

女性側は、所有権と労働基準法にもとづいて、パスポートなどの返還をもとめているほか、意思に反して労働を強制させられたうえに、パスポートがないために転職できず、経済的に不安定な立場に追い込まれたとして、慰謝料ももとめている。

●パスポートの返還をもとめる裁判は初めて

女性と代理人らが1月17日、東京・霞が関の厚労省記者クラブで会見を開いた。

女性は「(預けたパスポートなどは)すべて返還されるだろうと思っていましたが、結果的にはそういうふうになりませんでした。会社(事務所)が管理するものだから、と返してくれませんでした。それを聞いたとき、自分を証明するものが手元にないことにすごく不安を覚えました」と語った。

女性の代理人をつとめる指宿昭一弁護士によると、外国人労働者のパスポートの返還をもとめる裁判は初めてとみられる。

過去の裁判例によると、使用者が外国人労働者のパスポートを預かる行為そのものが「移動の自由を制限する」として違法となっていたり、パスポートの返還を拒否することが「公序良俗」に反して違法と認められている。

指宿弁護士は「パスポートを取り上げて、外国人労働者を意のままにすることは、強制労働にもあたる。国際的な常識からいえば認められないが、日本では、人を支配する道具として使われている。パスポートや卒業証明書の管理行為がいかに違法なことなのか、(裁判で)明らかにしたい」と述べた。

女性側は刑事告訴も検討している。

アドバンスコンサル行政書士事務所は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して「そのような取材はすべてお断りしている」「(コメントは)とくにない」とした。