コロナ離婚が危ういと指摘される「仮面夫婦」。お互いに愛情はないものの、経済的な目的や夫婦に子どもがいれば「子どものため」だけに繋がっている関係だ。

中には、同じ家にいても一言も話さなかったり、喧嘩が絶えなかったりする夫婦もいる。家庭に心安らげる居場所がなく、癒しを求めて不倫に走ってしまう人もいるようだ。

●夫の不倫「気にしない」という人も…

しかし、仮面夫婦であれば、たとえパートナーが不倫していたとしても「気にしない」という声もある。

インターネットの掲示板にも、仮面夫婦を長く続けているという女性が「旦那が不倫していると思います。ただ、今の自由な生活があるのであれば問題ありません」と投稿している。

投稿者は夫が自営業のため、ある程度裕福な生活ができているのだという。離婚しない理由は「お金を自由に使えるし、自分1人では自立できない」ためだ。

しかし、夫が離婚を請求してくる可能性はゼロではない。コメント欄には、そのときのために「不倫の証拠をおさえて、夫と不倫相手から慰謝料を取るべき」という意見もあった。

●夫婦関係が既に破綻していれば、不倫相手は慰謝料を支払う必要がない

このような場合、夫の不倫相手は慰謝料を支払わなければならないのだろうか。五十嵐里絵弁護士は、つぎのように説明する。

「不倫が始まる前に夫婦関係が既に破綻していた場合、不倫相手は慰謝料を支払う必要がないことは、裁判実務では確立したルールです。

不倫によって夫婦関係が壊れた場合に、慰謝料を支払うことになります。もし不倫が始まる前に、夫婦関係が破綻していた場合には『すでに壊れているもの(夫婦関係)をさらに壊すことはできない』と考えられるため、このルールが生まれました。

破綻が認められれば慰謝料を支払う必要はありません。実務においても、交際の始まった時点で夫婦関係が破綻していたかどうかが争点になることは非常に多いです」

●夫婦関係は破綻しているか?裁判所は慎重に判断

仮面夫婦であれば、本人たちにとっては夫婦関係は「破綻している」といえるだろう。しかし、客観的にみて夫婦関係が破綻しているのかは分かりにくい。どのような場合に夫婦関係が破綻していると認められるのか。

「夫婦関係が破綻しているか否かという点に関する裁判所の判断は非常に慎重です。破綻が認められるケースはそれほど多くはありません。

既に双方が弁護士を立てて離婚に向けての協議を行っていたり、調停で離婚についての協議を現に行っていたりする場合であれば、破綻が認められやすいといえますし、夫婦の不仲が原因で相当の期間、別居が継続しているという場合も破綻が認められることが多いです。

一方、夫婦が同居を継続しているが冷え切った関係だった、あるいは、口論やケンカが絶えなかったというケースになると、破綻が認められるケースはぐっと少なくなります。これは前述の離婚調停が進んでいる場合や別居が続いているケースと違って、『冷え切っていた』ことの立証が難しいから、ということもあります。

こうしたケースですと、夫婦関係が『相当に冷却していた』『相当に悪化していた』ものの、『完全に破綻していたとは言えない』として、慰謝料の支払が命じられることが多いように思います。

ただ、今回のケースは、夫から突然離婚を請求されることも想定できます。そのため、投稿者の書き込みに対するコメント欄にもあったとおり、慰謝料の請求をしないまでも、夫からの離婚請求を『有責配偶者からの離婚請求』としてしりぞけることができるように、不貞の証拠の保管だけは行っておいた方がいいと思います」

【取材協力弁護士】
五十嵐 里絵(いがらし・りえ)弁護士
新聞社に記者として勤務した後、法科大学院に進学、弁護士に。離婚・男女問題、遺産相続、企業法務を取り扱う。
事務所名:辻山・五十嵐法律事務所
事務所URL:http://www.tyig-law.jp