経営者である夫が不倫していることが発覚しましたーー。弁護士ドットコムに、このような相談が寄せられている。

相談者によると、夫は経営している会社の元社員と3年半、不倫関係を続け、不貞行為は数百回にのぼるという。また、不倫相手と2人で旅行に行ったことも複数回あり、支払いはすべて夫がしていた。

相談者はホテルの領収書などの証拠を複数握っており、夫もすべて「事実」であると認めているという。「夫と離婚する気はありません。不倫相手には2度と夫に近づかないでほしい」と相談者は切望している。

●接触禁止や口外禁止条項、違約金などを記載した合意書の作成を

相談者は、不倫相手が2度と夫に接近しないよう書面を作成したいと考えている。書面には具体的にどのようなことを盛り込めばよいのだろうか。

鈴木淳也弁護士は、次のように説明する。

「一度でも肉体関係を持った相手と連絡を取り合うことを許しがたいと感じるのは通常でしょう。夫婦関係の修復のために接近禁止を求めるのは当然のことです。合意書を作成するとよいでしょう。

不倫の件について職場等で吹聴されてしまうと二次被害が生じてしまいます。そこで、作成する合意書には、接触禁止や口外禁止条項を入れます。

接触禁止条項では、あらゆる手段による接触を禁止すると定めておきます。ただ、同じ職場内での不倫であった場合、仕事上で接触することが避けられないこともあります。そういった場合には『正当な理由のない限り』という一言を入れる場合もあります。

口外禁止条項については、不倫の事実や合意の内容について、いかなる方法を用いても、第三者に口外しないことを定めておきます。

また、これらの禁止条項に実効性を持たせるために、禁止行為をおこなった場合の違約金を定めておくといいでしょう。

違約金というのは、損害賠償の金額を予め定めておくものです。メリットは、実際の損害の立証をする必要がなく、明確であるということです。ただ、金額がいくらでもいいというわけではありませんので、注意が必要です。

たとえば、接触禁止に違反した場合は『違約金5000万円』を支払うと定めたとしても、損害額として高額過ぎることは明らかでしょう。高額過ぎる場合には、公序良俗に反するとして、適正金額を超す部分は無効になる可能性があります」

●不倫相手に手切れ金などを要求された場合は?

相談者は「不倫相手に慰謝料を請求したい気持ちもありますが、不倫相手に経済力がないため、諦めています」という。また、できるかぎり穏便に済ませるため、不倫相手に手切れ金(解決金)を要求された場合は支払うことも検討しているようだ。

鈴木弁護士は「不倫相手も不倫の事実を認識していたのであれば、手切れ金などを支払う必要はありませんので、断るべきでしょう」と語る。

「不倫相手に経済力がない場合、分割払いで慰謝料を支払ってもらうこともできます。慰謝料を請求する場合には『強制執行認諾約款付き公正証書』にしておくと安心できるでしょう。こうすることで、不倫相手が途中で支払を怠った場合に、訴訟提起することなく強制執行手続をすることが可能となります。

ただ、特に男女問題のトラブルに関しては、相談者のように穏便に終わらせたいという方も一定数いらっしゃいます。

今回のケースのように、早く不倫のことを忘れたいのに、不倫相手が一括で慰謝料を支払う資力がないといった場合であれば、慰謝料請求はしないかわりに不倫相手への解決金も支払わないという形で解決する方法もあり得ると考えます。実質、三者間で慰謝料と手切れ金を相殺するようなイメージです。

その場合でも、前述の接触禁止や口外禁止条項や当事者間で一切の金銭を請求しないという清算条項をいれた書面を作成しておくべきでしょう」

【取材協力弁護士】
鈴木 淳也(すずき・じゅんや)弁護士
第一東京弁護士会所属。大学時代は理学部に所属し、地球温暖化システムについての研究をしていた。しかし、多くの人と触れ合い、広く社会の役に立てる仕事に就きたいと考え、決まっていた就職を辞退し、司法試験を目指すことに。気象予報士の資格を持つ理系弁護士として、民事・刑事を問わず困っている人に寄り添う弁護活動を行う傍ら、お天気情報をブログで発信している。
事務所名:鈴木淳也総合法律事務所
事務所URL:https://law-sj.com/