東京を中心にチェーン展開する回転寿司店で店長として働いていた男性(当時41歳)が2019年5月7日に亡くなったのは、過労が原因だったとして、三鷹労働基準監督署が今年5月25日に労災認定していたことがわかった。

男性の妻(30代、都内)が6月10日、会見で明らかにし、「どんな補償がおりても、主人との時間には代えられません。いつも笑顔で優しかった主人は帰ってきません」と涙ながらに語った。

●週休1日、過労死ライン超えの時間外労働

男性は2014年4月、「サカイ総業」グループの「サカイ商事」に入社し、運営する回転寿司店「元祖寿司」で働いていた。

2016年7月から店長になり、吉祥寺の店舗に勤めていた2019年5月7日、心臓性突然死(致死性不整脈による心停止)によって自宅で突然亡くなった。

男性は店長として店全体を統括。従業員・アルバイトの監督、魚の仕入れから握りまでこなすほか、トラブル対応も一任され、営業日報をまとめ、会計の締め作業や、月1回の店長会議に出席していた。

遺族側代理人の川人博弁護士によると、男性は基本的に週休1日で働きづめだった。店の営業時間は午前11時〜午後10時だが、午前9時半には店に出て、午後11時ころに店を出るような生活を繰り返していたという。睡眠時間は4〜5時間という日が続いたそうだ。

男性の他に社員は1〜2人。ほかは外国人アルバイトが3〜4人で、人手不足も慢性的だった。

遺族は2019年10月25日に労災を申請。このたび、労災が認定され、労災遺族年金等の支給が決まった。

遺族側の主張と大きく隔たりはあるものの、残業時間は死亡前5カ月平均が80時間、死亡前6カ月平均は84時間と、「過労死ライン」とされる80時間を上回っていたと認定された。もっとも多い月は106時間52分に達していた。

遺族年金の証書を手にする川人弁護士

●妻の涙

男性はまだ幼い長男(7歳)と長女(3歳=いずれも現在)を残して逝ってしまった。妻はときおり涙声になりながら悲痛な思いを語った。

「主人は朝から夜中まで働き、帰ってくるといつもぐったりしていました。亡くなる前夜もリビングに入るなり座り込んで動けず、そのまま床で眠ってしまうほどでした。

本社の方は通夜に来られてもお花1つ手向けてくださいませんでした。主人の死を口外しないようにと、社内で話が出ていたようです。

なぜ必死に働いて死んでいったのに隠されなければならないのでしょうか」

男性のスマホのアラームは午前7時台に4度も設定されていた。「朝しか子どもたちと触れ合う時間がないので、1時間だけでも子どもと会えるように、7時過ぎに起きるように頑張っていました」(妻)

男性のスマホのアラーム設定(遺族が会見で提出した資料)

●労基署の認定と食い違う「休憩時間」

会社の就業規則で休憩は2時間半とされている。だが、川人弁護士らがアルバイトらに聞き取りしたところ、実際の休憩時間は1時間程度だったという。結果的に労災は認められたが、労基署は休憩時間を2時間半として労働時間を算定している。

川人弁護士は、休憩時間を多く設定するのは「技術的なやりかたで、外食産業に多い」と指摘する。

「働き方改革によって労働時間の上限規制があるものの、休憩時間をたくさんとっていることにすれば、実際の労働時間は上限よりも下回る。担当行政はそこまで踏み込めていない」

新型コロナの影響で営業時間短縮・休業していた飲食店には再開の兆しが見える。しかし、安心してもいられない。男性の身に起きたような悲劇は、氷山の一角かもしれない。

「徐々に長時間労働が戻ってきている。外国人労働者が確保できず、営業を復活しても人手不足のお店が多いのが現状だ。多重労働による労働不安、健康不安が増してはいけない」

会見に臨んだ妻

●生前の男性は「子どものために生きたかった」と語っていた

妻は「労働者は使い捨ての駒なのでしょうか」と訴えかける。

亡くなる1カ月前、41歳になったばかりの男性は「定年まで元気で働いて子どもたちを行きたい学校に行かせてやりたい。頑張るよ」と話していたそうだ。

「主人のように志半ばで突然亡くなってしまうかた、大切な人との突然の別れで悲しい思いをする方々が少しでも減るよう、長時間労働の改善がされることを願っています」

今後、遺族は会社との話し合いを求めていく。労働環境の改善のほか、補償についても求める意向だ。

サカイ総業は「広報担当のものがいないので、コメントできません」と話した。