日本郵政グループの社員合わせて約120人が、「持続化給付金」の趣旨に反して申請していたことが報じられ、問題視されている。

日本郵便とかんぽ生命の営業社員が営業手当(事業収入)の減少を理由に申請。しかし、原因は、かんぽ生命の不適切販売問題による営業自粛にあり、「新型コロナウイルス感染症との因果関係はない」(日本郵政)という。

必要な書類を絞るなど簡素な手続きで申請できるようにし、「新型コロナの影響による売上減」の証明を積極的には求めないがゆえに発生した今回の問題。「迅速な給付」と「適正な申請」を両立させることの難しさが浮かび上がっている。

●給付金の返還に応じていない者も

約100人が申請したという日本郵便は、取材に対し、「すでに持続化給付金を受け取った社員もいる。十数人の社員が申請の取り下げや給付金の返還に応じていない」と話す。

その上で、「引き続き、取り下げや返還を促していく。今後、(持続化給付金事業を扱う)中小企業庁から不正受給とされた社員については、厳正に対処する」という。

一方、かんぽ生命は、「18人が申請し、うち2人が既に受給していたが、全員が申請の取り下げ、返還に応じている」と話し、6月23日時点、受給した2人のうち1人は既に返還済みだという。

中小企業庁を所管する梶山弘志経済産業大臣は6月16日の記者会見で、「不正が確認されたものについては給付金の返還請求を行うほか、事業者名の公表や刑事告発も含めて厳正に対処したい」と述べた。

●迅速な給付を優先、不正の追及は原則事後に

給付のルールを定める「持続化給付金給付規程」によれば、「給付金の趣旨・目的から適切でないと長官が判断する者」には給付しないとされている(8条)。

そのため、たとえ事業収入が減少していても、今回のような新型コロナと関係ない申請は給付の対象とはならない。

では、申請の段階で、対象でない者への給付を未然に防ぐことができなかったのか。

この点、取材に応じた中小企業庁の担当者は「難しい」と話す。その理由として、事業者の手元に迅速に給付するという運用がかかわっているようだ。

「必要な書類を少なくするなど、簡素な手続きで実施している。そのため、事業収入の減少など要件を満たしているものについては、給付の対象にせざるをえない」

申請は、売上が昨年の同月比で50%以下であることを示す書類があれば可能で、新型コロナの影響で売上が減ったことの証明は要件になっていない。そのため、申請の段階では、基本的には判断がつかないようだ。

一方で、「不審な点やおかしなことがあれば、追及は十分に可能だ」と強調する。

「『不給付要件に該当しないこと』、『調査に応じること』、『不正受給が判明した場合には給付金の返還等を行うこと』『給付規程に従うこと』などについては、申請時に宣誓・同意してもらっている。調査に必要な書類も手元にあるので、不正受給等の疑いがあれば、必要な対応は行う」(中小企業庁の担当者)

不正受給等の疑いに関する調査については、給付規程に明記されている(10条)。「調査に応じること」「給付規程に従うこと」を宣誓している受給者としては、それにあらがう術はないことになる。

●不正受給が判明した場合

給付規程は、不正受給が判明した際の中小企業庁の対応についても以下のように定めている。

・給付金に関する贈与契約を解除し、給付金の全額に延滞金なども加えて請求する
・申請者の屋号・雅号等を公表する
・不正の内容に基づき、不正受給者を告発する

請求に応じない不正受給者への法的手段や告発する際の罪名については、「個別の事案にもよるので、具体的な回答は差し控えたい」(中小企業庁)という。

もっとも、「贈与契約であり、原則として民法が適用され、給付・不給付の決定、贈与契約の解除については、行政不服審査法上の不服申立ての対象とならない」とされているので(給付規程10条4項)、請求に応じない不正受給者に対しては、民事訴訟を提起し、最終的には強制執行することが考えられる。

また、告発についても、不正受給が「偽りその他不正の行為(詐欺、脅迫、贈賄その他の刑法各本条に規定するものをいう。)に触れる行為」(給付規程7条5号)と定義されていることから、給付金の趣旨に反する申請に基づく不正受給であれば、基本的には「詐欺罪」で告発されることが考えられる。