髪型をツーブロックにすると事件や事故にあうーー。3月12日に開かれた東京都予算特別委員会で、都立高校の校則に関して教育長がおこなった答弁が波紋を呼んでいる。

都議会で質疑をしたのは、池川友一都議会議員。池川都議は「頭髪というのは人権と深く結びついています」とした上で、「ツーブロック禁止という校則は一定数あります。なぜ、ツーブロックはだめなんでしょうか」と質問。

これに対し藤田裕司教育長は「外見等が原因で事件や事故に遭うケースなどがございますため、生徒を守る趣旨から定めているもの」と答弁した。

池川都議が7月13日、自身のツイッターで「本当に驚愕の答弁」と質疑の動画を公開すると、「データがあるのでしょうか」「あまりにもくだらない理由」と疑問の声が多数寄せられた。

こうした頭髪指導をめぐっては、生まれつき茶色い髪を黒く染めるよう学校から強要され精神的苦痛を受けたとして、2017年秋に大阪府立高校3年の女子生徒が府を相手に訴訟を起こしている。

はたして、髪型を強制するという学校の理不尽な校則は、法的に問題ないのだろうか。高橋知典弁護士に聞いた。

●直ちに違法にはならない

――ツーブロックを理由に指導した場合、法的問題はありますか

頭髪指導に問題がないとはいえませんが、この校則は直ちに違法にはならないと思います。

まず、同じ頭髪指導といっても、生まれつき茶色い髪を黒く染めるよう学校から強要され精神的苦痛を受けた生徒が府を相手に訴訟を起こした事案と、このツーブロック禁止校則を一緒にすることはできません。

今回のツーブロック禁止校則は、「『たくさんある髪型』の中からツーブロックの髪型を選ぶ自由」を禁止するものですが、大阪府の事件は生来の髪の色を校則で指導するというものです。

これは「『唯一無二の生まれた体の個性』のまま生きる」ことを禁止しているとみられる可能性があります。この点で、同じ頭髪指導でも、状況は違うというといえます。

●学校には校則を定める裁量がある

――校則が違法と判断されるケースはあるのでしょうか

校則はおかしければすぐに違法というわけではありません。

過去には、学校が校則で生徒を丸刈りにすることが、生徒個人の自由を侵害するなど主張して争った「丸刈り校則事件」(熊本地裁昭和60年11月13日判決)があります。

この事件では、「町立中学校長が男子生徒の髪形を『丸刈、長髪禁止』と定める校則を制定、公布したことは、裁量権を逸脱したとはいえず、違法ではない」と、丸刈り指導の校則も適法であるという評価がされました。

この裁判でも、前提は、「生徒の服装等について規律する校則が中学校における教育に関連して定められたもの、すなわち、教育を目的として定められたものである場合には、その内容が著しく不合理でない限り、右校則は違法とはならない」としており、学校には校則を定める裁量があると理解されています。

簡単にいってしまえば、学校には「よっぽどひどいものではない限り、生徒を縛る校則を作る自由がある」ということです。このため、ツーブロック禁止校則も、違法にはならないと考えられます。

●学校側は制限する根拠を

――下着を白に限定したり、水飲みを禁止したり…。理不尽な校則や規則は「ブラック校則」として度々話題になります

こうした「校則を作る自由」を裁判所が認め、学校がそれに甘えた結果、近年、生徒を縛る意味不明かつ有害な校則が多く発見される状況になっていると思います。

仮に違法ではないにしても、本来、校則という人(子どもたち)の大事なものを制限するルールを作る以上、何のために制限をかけるのか、根拠を持っていなければなりません。

その根拠も薄弱なまま校則を作り、維持すれば、必ず今回のように理由や根拠を聞かれ、結果教育機関の答えがよくわからないものであれば恥をかきます。この恥の積み重ねが、結果的に学校の先生を軽視する風潮にもつながるのではないでしょうか。説得力のある根拠があるかどうかの点検は必須でしょう。

本来ルールは、車と同じように、時代や新しい科学的知見に合わせて見直しや調整といった安全点検が必要です。

――時代に応じて、校則は見直されるべきということですね

校則の中には、よく聞くと「理由はないけど何でもいいから子どもは先生のいうことを聞け」という趣旨としか考えられないようなものがあります。私は退学事件などで、学校が声高にこのような主張をしている場面に出くわします。

この「考えるな、学校の命令に従え」という校則は、まるで軍隊のルールのようだと感じます。教員の方が自分たちの権威を守るために生徒には「考えるな、従え」という押しつけをすることは、大きな矛盾に見えます。

ツーブロック禁止校則は違法とは言えませんが、今後も時代にあわせて校則を見直して行く必要はあります。ブラック校則を許さず、最初に動くべきなのは、外部の人間ではなく、学校や先生方であるべきではないでしょうか。

【取材協力弁護士】
高橋 知典(たかはし・とものり)弁護士
第二東京弁護士会所属。学校・子どものトラブルについて多くの相談、解決実績を有する。TBS『グッとラック!』水曜コメンテーター。教育シンポジウム、テレビ・ラジオ等の出演。東京こども専門学校講師としても活躍。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/