イカやサバなどの魚介類に潜む寄生虫「アニサキス」は、腹痛などの症状をもたらす食中毒(アニサキス症)の原因として知られています。

苦しみたくないものですが、弁護士ドットコムにこのほど「お寿司屋さんで飲食しアニサキス症にかかりました」という相談が寄せられました。

アニサキス症になると、再感染した際にアニサキスアレルギー発症の可能性があり、命に関わる事態もありえるーー。ネットで情報を調べた相談者は、不安を感じて検査を受けました。

「数値が高くアニサキスアレルギーの疑いがある」との検査結果が出たものの、必ずしもアレルギー症状が出るわけではないそうです。

相談者が申し出たところ、因果関係を認めた店から、飲食代の返金と、治療費(検査費用含む)の支払いがなされたとのこと。

しかし、今後の食事における不安は払拭されません。「食事のたびに、命の危険におびえていかなければならないのでしょうか」

相談者は、アニサキスアレルギー発症者が起こした損害賠償請求訴訟によって「200万円以上の和解金」が支払われたとされる例を引き合いに、「アレルギーの疑い」だけでも、慰謝料を請求することはできるのかと聞いています。自身も飲食店を経営する中村浩士弁護士に取材しました。

●慰謝料額の相場、過去には200万円以上も

ーー本件のように「疑い」だけでも飲食店に慰謝料を請求することは可能でしょうか

アニサキス症の発症が確実で、寿司店が自分の店で提供した飲食物による結果であることを認めているのであれば、アニサキス症を発症したことに基づく慰謝料請求が可能です。

アニサキスアレルギーは、今後の食生活に大きな影響を与え、生命の危険もあり得るため、 100万円以上の高額慰謝料の請求が認められる可能性が高いです。

ただし、「疑い」というだけでは、確定診断ではありませんので、アニサキスアレルギーを理由とする高額な慰謝料請求を認めてもらうのは困難です。

しかし、その場合でも、通院日数や休職日数などの諸事情にもよりますが、10万円から50万円程度の慰謝料が認められる可能性があります。

アニサキス食中毒等を理由とする訴訟や弁護士介入による請求は多数発生しています。サバの提供によるアニサキス食中毒によりアニサキスアレルギーを発症したとして、約800万円の損害賠償請求訴訟が提起された事案について、220万円の和解金が支払われた例もあります。

●店にとっては死活問題

アニサキス症等の被害に遭われた場合、保険対応では数万円しか払われないことが多い中、きちんと交渉をすれば、高額の賠償が認められることも少なくありません。

特にアニサキスアレルギーを発症した場合には、今後の食生活を一変させてしまう深刻な被害を受けることになりますので、弁護士などにきちんと相談して対応すべきだと思います。

逆に、お店にとっては、慰謝料請求だけでなく、営業停止処分もなされえますので、十分な注意が必要です。

お客さん自らが保健所に通報しなくても、アニサキス症などの診断結果が出た場合、病院の医師には、保健所への通報義務があります。

保健所が店の立ち入り検査を実施し、アニサキス予防に十分な措置を講じていないとして、数日間の営業停止処分に付されることになるのが通常であります。

【取材協力弁護士】
中村 浩士(なかむら・ひろし)弁護士
刑事弁護及び犯罪被害者支援のほか、一般企業法務を数多く手掛ける検事出身の弁護士。
札幌弁護士会・犯罪被害者支援委員会元委員長、日本弁護士連合会・犯罪被害者支援委員会元委員
事務所名:弁護士法人シティ総合法律事務所
事務所URL:https://city-lawoffice.com/