いくら時代が変わったとは言え、高齢者の介護の担い手を、子どもの配偶者が務めることは少なくない。各家庭の事情があるとはいえ、介護をすることで仕事や収入を失うこともあり、経済的にも大きな負担だ。

ところが従来、介護を担ったのにもかかわらず、「子の配偶者」が、相続において報われないことが問題視されてきた。

弁護士ドットコムには「夫の死後も、夫の両親の介護をしている。夫の両親が亡くなっても、嫁である私の立場では相続は認められないのか」という「嫁」の側からの質問、また「時折、介護に協力しただけで次男の嫁にも、相続が認められてしまうのか」という親族からの質問も寄せられている。

実はこうした質問は、相続人でなくても介護にあたった親族に対して「特別寄与料」を認めた2020年の民法改正に多いに関係してくる。

これまで「介護した損」だった子の配偶者にとって、この制度はどのように有利にはたらくのだろうか。相続問題に詳しい小松雅彦弁護士に聞いた。

●民法改正で「特別寄与」の制度がはじまる

ーー夫の死後も夫の両親を介護しているのに、相談者は相続人にはなれないのでしょうか。なお、夫には3人の妹がいますが、介護は何もしていません。

残念ながら、相談者は養子縁組をしない限りは夫の両親の相続人にはなれません。相続人は相談者の夫の妹たち3人となります。

そのため、夫の両親が相談者にも財産を遺贈するとの遺言をするなどしないと、相談者はご夫の両親から遺産を取得できないというのが今までの法律の定めでした。妹たちは両親の介護をしなくても相続できることを考えると、不公平ですね。

このような不公平をただすために、民法改正により令和元年(2019年)7月1日からの相続について、「特別寄与」の制度が定められました。

ーー特別寄与とは、どのような制度ですか

相続人以外でも無償で療養看護その他の労務提供により被相続人の財産の維持または増加に貢献した場合、遺産の分配を請求できるようになる制度です。

この特別寄与料は被相続人の法律上の親族でなければ認められませんが、相談者は1親等の姻族ですので対象となり得ます。

●権利行使の時間が短いことに注意

ーー介護に協力するといっても、その程度は様々です。特別寄与が認められるには、どのような協力が必要なのでしょうか

療養看護その他の労務の提供により特別の寄与をし、相続財産の維持増加との間に因果関係がある場合に特別寄与料は認められるのです。ただ、新しい制度なので、どこまですれば特別の寄与となるのかはまだはっきりしていません。

注意することは、権利行使の期間が短いことです。特別寄与者が相続の開始及び相続人を知ったときから6カ月、または相続開始から1年で権利は消滅します。

【取材協力弁護士】
小松 雅彦(こまつ・まさひこ)弁護士
後見・相続・遺言を多数取り扱う。「気軽に相談できる、親しみやすい法律家」をモットーに身の回りの相談にも対応している。薬害エイズ事件やハンセン病国賠事件、薬害肝炎事件なども担当した。
事務所名:多摩オアシス法律事務所
事務所URL:http://komatsu6.com/