離婚後、元配偶者が家に置いていった荷物の処分に困っている人たちがいる。ネット上には「売れるものはすべて売った」「捨てた」などの投稿がみられる。

しかし、処分したことでトラブルが起きることもある。弁護士ドットコムにも、元夫が置いていった荷物をゴミとして処分したという女性が相談を寄せている。

相談者の夫は不倫の末に家を出ていき、その1年半後に調停離婚が成立した。離婚が成立した後、元夫は1度家に置いていた自分の荷物を取りに来た。その際に元夫が持ち帰らなかった漫画本やスリッパなどは、相談者がいらないものと判断し、捨てたという。

ところが、元夫は今になって「置いていたものがある。返してほしい」と連絡してきた。相談者は元夫が要求しているものを捨てた記憶はなく、見たこともないそうだ。

そもそも勝手に元夫の荷物を処分してもよいのだろうか。小川弘恵弁護士に聞いた。

●いきなり処分するのはNG

ーー離婚成立後、元夫が自宅に残した私物を勝手に処分してもよいのでしょうか。

元夫が所有していた私物を勝手に処分することは「不法行為」として民事上の損害賠償責任を負う可能性があります。

また、場合によっては、器物損壊罪、窃盗罪あるいは横領罪等の刑事上の責任を問われる可能性もないわけではありません。

ですので、元夫が自宅に残し、要らないものだと推測された荷物であっても、いきなり処分してしまうのはNGです。

●清算条項の記載があれば処分してもよい?

ーー調停調書や公正証書の中に清算条項の記載がある場合は元夫の荷物を処分してもよいのでしょうか。

調停調書や公正証書の中に、元夫の私物について、元夫が所有権を放棄し、私物の処理を元妻に一任する等の記載がある場合は、元妻が処分しても問題はないといえます。

しかし、私物の引き取りについて離婚協議の際になんら話をしないまま調停が成立したり、離婚給付に関する公正証書を作成した場合は注意が必要です。

このような場合、たとえ調書や公正証書の中に清算条項の記載があったとしても、元夫の私物を勝手に処分すると、所有権を侵害したということで上記のような問題になる可能性はあります。

ーートラブルを防ぐには、どうすればよいですか。

離婚の協議をしている段階で、私物の引取りについても忘れずに調整し、最終的に残置された私物については所有権を放棄してもらうことを協議書に盛り込む必要があります。

離婚までに私物の処理について合意ができなかった場合には、元配偶者に対し、期間を定めて引取りを通知するなどして、自らが損害賠償責任等を負わないよう慎重に処理を進めていく必要があります。

●捨てた記憶がない場合でも弁償しないとダメ?

ーー相談者は元夫が「返してほしい」と要求しているものを見たこともなければ、捨てた記憶もないとのことです。このような場合でも弁償しなければならないのでしょうか。

元夫が返してほしいという物品を見た記憶も捨てたこともないような場合、そもそも不法行為をしていないのですから、自ら弁償をする必要はありません。

仮に、元夫が弁償を求めて損害賠償請求訴訟を提起した場合、元夫が勝訴するには、元妻がその物品を故意または過失により捨てた事実や、その物品の損害額などを証明しなければなりません。

元夫には、そもそもその物が存在していたことや、元妻が処分したことを証明できる証拠はあるのか、あるいはその物が費用をかけて訴訟提起してまで回収すべきほどの価値があるのかなど、訴訟を提起するためにクリアしなければならない課題が残ることになります。

【取材協力弁護士】
小川 弘恵(おがわ・ひろえ)弁護士
学生の頃より「旅行が好き」「人の喜ぶ顔を見るのが好き」という理由で、旅行会社に就職したが、困っている人の役に立ちたいと一念発起し、弁護士に。いつでも気軽に相談できる「親しみやすさ」と「頼りがい」を兼ね備えた弁護士であることをモットーに、離婚・相続・企業法務などの事件を多く取り扱っている。
事務所名:弁護士法人みお綜合法律事務所
事務所URL:http://www.miolaw.jp/index.html