婚約中は、結婚式や新生活にむけて胸が弾む時期ですが、最後の火遊びのつもりなのか、浮気をしてしまう人もいるようです。

東京都内に住む30代女性は、相手の浮気によって、結婚式の半年前に婚約破棄をしたと話します。

「結婚準備のために仕事を辞め、家財道具を購入し、挙式・披露宴の手付金もすでに支払っていました。婚約破棄が決まってから式場に連絡をすると『キャンセル料を支払って欲しい』と事務的に言われてしまいました」。

精神的なショックはもちろん、収入を失ったこと、多額の貯金を使ったことで今後の生活に強い不安を抱えています。そこで「相手の都合でダメになったのだから、慰謝料や結婚にむけて使ったお金を取り戻したい」と話しています。

婚約破棄された場合、相手に対してどんな損害賠償請求が認められるでしょうか。吉田雄大弁護士の解説をお届けします。

●「婚約破棄」は「契約破棄」と同じ意味

ーー相談者は挙式の準備などをしていたようですが、そもそも、どのような関係であれば「婚約」したといえるのでしょうか。

婚約には、特別な形式はなんら必要ではありません。役所への届け出も不要です。そのため、破談となった場合、「婚約」したかどうかをめぐり、当事者間で争いになることがあります。

「結婚しましょう」「お受けします」と言葉を取り交わすだけで、婚約の成立が認められるわけではありません。

婚約が成立したかどうかを判断する際には、結婚の約束が単に2人の間での合意にとどまっているのか。互いの家族の紹介や式場の予約など、第3者にも知られるところとなっているのか。さらには結納金や婚約指輪の授受があったのかどうかなど、様々な事情が考慮されます。

そして「婚約」は、将来的に婚姻をする目的で結ぶ「契約」です。「婚約破棄」とは契約の破棄と同じことを意味しますから、「不履行」による「損害賠償」が請求できることもあります。

●財産的・精神的損害を請求できる

ーー婚約破棄された場合は、どのような理由があったとしても、損害賠償を請求できるのでしょうか。

正当な理由なく破棄した場合には、婚約不履行として、相手方が被った損害を賠償しなければなりません。

一方で、婚約した当事者の1人が浮気など不誠実な振る舞いをするなど、婚姻できない原因がもっぱら相手方にある場合には、婚約を破棄した上で、損害賠償を請求できることもあります。

ーー具体的に、どのような「損害」を請求できるのでしょうか。

請求できる「損害」には、不当な婚約破棄、婚約破棄せざるをえなかった原因と因果関係が認められる限り、財産的損害だけでなく、精神的損害(慰謝料)も含みます。

財産的損害としては、式場のキャンセル料金や新居・家具の費用等の実費のほか、結婚を念頭において退職した場合における逸失利益(退職しなければ得られた給料や退職金)など、様々な場合が考えられます。

結納金や婚約指輪、嫁入り道具など「どちらかが贈る物」については、婚約破棄の原因を作った側が贈ったものについては、返還を認めない裁判例が多いようです。

たとえば、男性の浮気が原因で婚約破棄となった場合、男性は結納金の返還を求めることはできません。ただ、女性の浮気が原因だとしたら、女性は男性に結納金を返還する請求が認められるケースが多いです。

慰謝料は年齢や性別、社会的地位のほか、婚約期間の長短、同棲していたかどうか、性交渉や妊娠の有無、過去の妊娠中絶の有無も判断されます。このほかにも、婚約破棄の時期や破棄理由などあらゆる事情が考慮されていきますから、先ほど申し上げたように、婚約破棄の慰謝料請求は「ケースバイケース」の幅が広くなっていくのです。

(弁護士ドットコムライフ)

【取材協力弁護士】
吉田 雄大(よしだ・たけひろ)弁護士
2000年弁護士登録、京都弁護士会所属。同弁護士会子どもの権利委員会委員長等を経て、2012年度同会副会長。2018年6月から日弁連貧困問題対策本部事務局長。
事務所名:あかね法律事務所
事務所URL:http://www.akanelawoffice.jp/