「交際していた女性が、私の身辺調査をおこなっていました。違法なのではないでしょうか」。弁護士ドットコムに、このような相談が寄せられています。

相談者は、女性と4カ月前に別れました。ところが別れた後、女性が興信所に依頼し、身辺調査をおこなっていたことが発覚。女性は、相談者が結婚の意思を示さなかったため、「既婚者なのではないか」と疑っていたようです。

「たしかに、彼女とは婚約しませんでした。ただ、なぜこのような事をされたのか理解できません。プライバシーの侵害ではないでしょうか」と相談者は聞いています。

相手の素性や家の事情について、探偵などを利用して調査することに法的な問題はあるのでしょうか。近藤公人弁護士の解説をお届けします。

●興信所の身辺調査はどこまで許される?

ーーそもそも、興信所を利用した身辺調査は法的に問題ないのでしょうか。

プライバシー権は、私生活上の事柄をみだりに公開されない法的な権利です。相手の素性や実家の事情などは私生活上の事柄ですので、これらを調査することはすべてプライバシー権侵害となり、違法のようにもみえます。

しかし、必ずしも違法とはいえない可能性もあります。

平成18年6月に「探偵業法」が制定され、探偵は「他人の依頼を受けて、特定人の所在又は行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務」をおこなえることになりました。

ここでいう「所在又は行動」には、現在のものだけでなく、過去または未来のものも含まれます。学歴、勤務先、所属団体などについての情報や素行なども調査対象です。

ーー婚約者の身辺調査は法的に問題はないということでしょうか。

プライバシー権は、私生活上の事柄をみだりに公開されない法的な権利だと述べました。「みだりに」とは、これといった理由もなくやたらに、という意味ですが、婚約者の情報収集は一定の理由があります。

たとえば、義理の両親らが、探偵に依頼して婚約者の実家周辺に聞き取りをし、その両親だけに情報が開示されるならば、法的に問題はありません。

探偵に依頼せず、みずから調査したとしても、必要性はあると判断され、違法ではないと考えられます。ただ、素人が調査するとなれば、聞き取りの手段が問題になる可能性がありますので、専門家に任せるべきでしょう。

ーー相談者のように婚約までしていない場合は、いかがでしょうか。

私も「独身だと思っていたのに相手が既婚者であったので損害賠償をしたい」という相談を受けた経験は、過去に数多くあります。

したがって、相手の行動に不審な点があったり、おかしいと感じたりした場合には、既婚者ではないのか、他に女性がいるのではないのかという調査を興信所に依頼することは、違法とはいえないでしょう。

問題は「相手の行動がおかしい」という基準ですが、これはケースバイケースなので、一概に基準を設けることは難しいでしょう。

●調査が「違法」となるケースも…

ーー身辺調査が違法と判断されることもあるのでしょうか。

あります。調査方法が、窃盗などの刑法違反、不正アクセス禁止法違反の行為などによる場合には、違法となります。

そして、借金歴や犯罪歴は、一般的には知ることができません。借金歴は信用情報センターに本人が問い合わせなければ開示されませんし、犯罪歴は警察庁などで厳重に管理されており、弁護士でも開示が困難です。

借金歴や、インターネットに掲載されていない犯罪歴の調査結果があることは、違法な手段で情報を入手したと推定できますので、違法と評価されるでしょう。

(弁護士ドットコムライフ)

【取材協力弁護士】
近藤 公人(こんどう・きみひと)弁護士
モットーは「依頼者の立場と利益を第一に」。滋賀県内では大きな法律事務所に所属し、中小企業の法務や、労働事件、家事事件など、多種多様な事件をこなしている。
事務所名:滋賀第一法律事務所
事務所URL:http://www.shigadaiichi.com/