グループの正社員と契約社員を対象とした希望退職者を募集していた「セガサミーホールディングス(HD)」は1月15日、募集人数の650人を上回る729人が応じたと発表した。

遊技機やゲームなどの事業を展開するセガサミーHDは、新型コロナウイルスの影響で業績が悪化した。

その対策として、グループ全体のコスト削減を図ろうと「特別退職加算金の支給」「希望者に対する再就職支援等」の優遇措置をかかげ、昨年11月から12月にかけて希望退職者を募集していた。

企業側は一定の見込みのもと、希望退職者を募集して、優遇措置を設けているはずだが、募集人員を上回った場合でもすべて認めなければいけないのだろうか。企業の人事労務にくわしい藥師寺正典弁護士に聞いた。

●法的には「通常の合意退職」と違いはない

——希望退職は、法的にどのように扱われますか。

希望退職とは、企業が退職金の加算など、優遇措置を提示して退職希望者を募集し、企業と退職希望者の双方が合意のうえで、雇用契約を解消する方法です。なお、希望退職の募集は、労働者の退職の意思表示(申し込み)を誘因する事実行為となります。

——希望退職と通常の合意退職とはどう違うのでしょうか。

希望退職は、希望退職者の募集手続で、労働者の退職の意思表示(申し込み)に対して使用者が承諾して、合意退職させる方法です。法的な性質は、通常の合意退職と変わりません。

ただ、希望退職を募集する場合は、何らかの優遇措置を提示して、労働者の自発的な意思表示を待つことになるので、優遇措置があるという点では通常の合意退職と異なるという整理もできます。

●募集人員を上回った場合、選別されることも

——希望退職者の募集人員を上回った場合でも、企業側はすべて認めなければならないのでしょうか。

希望退職を募集する場合は、「募集対象者、募集期間、募集人数、退職日、退職条件(優遇措置の内容)、応募手続」などを定めた募集要項を作成し、事前に従業員に周知することになります。

その際、募集要項において、会社が承認した従業員のみ希望退職の対象者にする旨の規定「会社承認規定」を定めることが実務上は一般的ですので、募集人員を上回った場合でも、企業側は対象者を選別することが可能です。

——希望退職の募集に応じても、認めてもらえないことがあるのですね。

そうです。また、募集時の個別面談において、応募しても不承認になる見込みの従業員には、あらかじめ、そうなる可能性を伝えておき、応募者数を調整することも実務ではおこなわれています。

——今回のケースは1割強上回った程度ですが、たとえば、募集人員の2倍、3倍の希望退職者がいる場合はどうでしょうか。

募集人数の2倍、3倍の応募があった場合は、当初の想定よりも希望退職者が増えてしまうことによって、業務上の支障が生じないか、希望者の中に有能な人材が含まれていないか、といった事情などを考慮して、希望退職者の人数や人選について経営的な判断をおこなうことになります。

希望者数が募集人数を前後することは通常のことと思いますが、過去には住宅設備機器大手のLIXILグループが約900人を募ったところ、約2倍の応募者がいたという事例(2012年)もありました。募集手続の内容や会社の経営状況などによっては、募集人数を大幅に上回る希望退職もありえるとは思います。

【取材協力弁護士】
藥師寺 正典(やくしじ・まさのり)弁護士
中央大学法科大学院修了後、2013年弁護士登録。労働法制委員会(第一東京弁護士会)、日本CSR普及協会、経営法曹会議等に所属。主に、使用者側の人事労務(採用から契約終了までの労務相談全般、団体交渉、問題社員対応、就業規則対応、訴訟対応、労基署対応、労務DD等)、中小企業法務、M&A等の商事案件に対応。
事務所名:弁護士法人第一法律事務所(東京事務所)
事務所URL:http://www.daiichi-law.jp/