近づく新年度に向けて、クローゼットや押入れなど、あらゆる場所に潜む「不用品」を断捨離したいと考えている人も多いのではないでしょうか。

ネットにも、「断捨離」をめぐるさまざまな投稿がされています。テーマの一つが、妻から見たら「不用品」に映る夫の趣味のコレクションをめぐる問題です。

カメラ、鉄道模型、フィギュア、ゴルフ用具など、どれも本人にとっては大切なもの。しかし、「ずっと置かれっぱなし。本当に必要なの?」と一言物を申したくなる妻たちも少なくありません。中には「こっそり捨てました」という人も。

でも、無断で捨てて、本当に問題ないのでしょうか。夫の私物の「断捨離」にどんな注意が必要なのか、もし捨てられた側が離婚を希望したらどうなるのか。尾崎博彦弁護士に聞きました。

●夫婦でも「特有財産」を勝手に処分するのはNG

——夫婦であれば、勝手に捨てても大丈夫なのでしょうか。

夫婦間におけるこのようなトラブルは、法律的な解決以前に、両者で考えるべきことだと思いますが、法律上の見解を示してみたいと思います。

夫の私物を「勝手に捨ててしまおう」と妻が考える背景には、「夫婦はすべてを共有してる」という思い込みがありそうです。

しかし、共有だからといって、相手の承諾なく勝手に処分して良いわけはありません。そもそも夫婦とはいっても、すべての持ち物が「共有」されるわけではありません。

——どのような物が共有されないのでしょうか。

民法では、夫婦の一方が、婚姻前から有する財産や、婚姻中に自分の名で得た財産(特有財産)は「夫婦の一方が単独で有する」とされています。

したがって、夫婦それぞれが手に入れた趣味のコレクションは「特有財産」に該当します。たとえ夫婦だったとしても、勝手に処分することはできません。

夫が大事にしているカメラや鉄道模型が「不要品」に見えたとしても、妻にとっては「他人の物」です。勝手に捨ててしまった場合、夫婦間であっても、「器物損壊罪」が成立する可能性があります。

——「断捨離」が犯罪になってしまうこともあるということですね。

ただし、「誰が見てもゴミ!」といえる物を捨てた場合は「器物損壊罪」にあたるかは疑問です。そうでない場合でも、夫からの刑事告訴がないと処罰できません。

また仮に、夫が刑事告訴しても、客観的に価値のない物であれば、通常はたいした処罰を受けることはないと考えられます。

●「勝手に処分」だけで離婚は困難

——勝手に処分された夫としては「弁償しろ」と言いたくなりそうです。

刑事事件になるかどうかは別にして、夫は妻に対して損害賠償請求が可能です。この場合、捨てられた物の価値によって、判断は異なります。

本人だけが大事な物と思っている「がらくた同然」の物については、特別な場合を除いて、主観的な価値は法的に保護されませんので、慰謝料の請求も難しいでしょう。

これに対して、捨てられた物が高額品である場合には、損害賠償請求も覚悟しなければならないと考えられます。ただ、高価な物を「がらくた同然」に放置していたとすれば、「過失相殺」により、損害額が大幅に減額されるかもしれません。

——「もう離婚だ」となった場合はどうでしょうか。

私物を捨てられた側が「断捨離」を理由に離婚を希望した場合、裁判における離婚事由として、それだけで認められるとは考えにくいです。

ただ、こうしたことの積み重ねから、性格の不一致となり、「婚姻を継続しがたい重大な事由」があると認められる場合には、離婚原因の一つになると思います。

(弁護士ドットコムライフ)

【取材協力弁護士】
尾崎 博彦(おざき・ひろひこ)弁護士
大阪弁護士会消費者保護委員会 委員、同高齢者・障害者総合支援センター運営委員会 委員、同民法改正問題特別委員会 委員
事務所名:尾崎法律事務所
事務所URL:http://ozaki-lawoffice.jp/