東京・八王子市のアパートで、階段の一部が崩れ落ちて住人の女性が亡くなった事故。このアパートを施工したとして、家宅捜索を受けていた相模原市の建設会社が5月13日、横浜地裁相模原支部へ自己破産を申請した。

警視庁は業務上過失致死容疑で捜査を開始。また、この建設会社が手がけた他の複数の物件でも、ずさんな工事がおこなわれていたと報道されている。

自己破産についてネットでは「管理責任は問えないのか」「破産したから終わりにならないでほしい」という声が上がっており、赤羽一嘉国交相も「あってはいけないことで、大変遺憾」「法治国家としての成り立ち、前提が崩れる」と厳しく批判している。

果たして、自己破産すると賠償責任も免除されるのだろうか。近藤暁弁護士に聞いた。

●建設会社に請求はできない

——会社が自己破産した場合、被害者は損害賠償請求をできないのでしょうか。

被害者が損害賠償請求をおこなう相手方については、建設会社やその役員(代表者など)のほか、アパートのオーナーが考えられます。

まず、建設会社に対しては、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条、会社法350条)をすることが考えられますが、建設会社についてはすでに破産手続が開始しています。

そのため、債権者(被害者を含む)の権利処理は、破産手続において、建設会社の財産の換価と債権者への配当というかたちで行われることとなります。しかし、配当が不十分な場合もあります。

そして、そのような場合であっても、建設会社は破産により解散・清算となるため、被害者は建設会社に対してそれ以上の請求をすることはできません。

●免責されないケースも

——では建設会社の役員に対しては、請求できるのでしょうか。

建設会社の役員に対して、不法行為や任務懈怠に基づく損害賠償請求(民法709条、会社法429条1項)をすることが考えられます。

報道されている記事からは明らかではありませんが、建設会社の破産手続と併せて、代表者などの役員についても破産・免責の申立てがなされている可能性があります。

この申立てに対して免責許可の決定がなされれば、役員は債務を免れることになります(破産法253条1項本文)。

ただし、「破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権」などについては免責されないこととされています(破産法253条1項3号)。

●今回のケース「重大な過失があるといえる」

——今回のケースについては、どう考えられますか。

今回の建設会社が手がけた物件については、一見して危険だと分かる状態のものばかりであったこと、現場の作業員や会社の幹部がその危険性を認識していたこと、階段の崩落事故が過去にも複数回発生していたことなどが指摘されているようです。

これらが事実であれば、役員には損害の発生につき重大な過失があるといえるでしょう。

この場合、役員につき免責許可の決定がなされたとしても、被害者は損害賠償請求をすることができます。

また、アパートのオーナーに対しては、賃貸借契約の債務不履行にもとづく損害賠償請求(民法415条)または不法行為にもとづく損害賠償請求(民法709条)をすることが考えられます。

なお、建設会社やアパートのオーナーが保険(生産物賠償責任保険、施設賠償責任保険など)に加入していれば、被害者の損害はこれらの保険によって填補される可能性があります。

【取材協力弁護士】
近藤 暁(こんどう・あき)弁護士
2007年弁護士登録(東京弁護士会、インターネット法律研究部)。IT・インターネット、スポーツやエンターテインメントに関する法務を取り扱うほか、近時はスタートアップやベンチャー企業の顧問業務にも力を入れている。
事務所名:近藤暁法律事務所
事務所URL:http://kondo-law.com/