誰かが不倫をした時、配偶者だけでなく子どもにも傷を残してしまうことがあります。夫が不倫したという女性が「子どもたちから相手に慰謝料を請求することはできないのでしょうか」と、弁護士ドットコムに相談を寄せました。

相談者は、15歳と6歳の2人の子どもがいます。不倫発覚後、相談者の夫は家を出ており、相談者は不貞相手に慰謝料請求をしているといいます。これに加えて、「父親を奪われ精神的苦痛を負った」として、子どもたちからも請求したいと考えているようです。

法的にそのようなことは可能なのでしょうか。岡本陽平弁護士に聞きました。

●最高裁の判例は?

今回のような事案について参考になると思われる最高裁の判例(最高裁昭和54年3月30日判決)があります。

この事案は、今回の相談者と同じように、不貞をされた妻だけでなく、子どもも不貞相手の女性に損害賠償を請求したものです。

最高裁は、「妻及び未成年の子のある男性と肉体関係を持った女性が妻子のもとを去った右男性と同棲するに至った結果、その子が日常生活において父親から愛情を注がれ、その監護、教育を受けることができなくなったとしても、その女性が害意をもって父親の子に対する監護等を積極的に阻止するなど特段の事情のない限り、右女性の行為は未成年の子に対して不法行為を構成するものではないと解するのが相当である」と判断しました。

仮に不倫があったとしても、父が子に対して愛情を注ぎ、監護、教育を行うことは自らの意思によって行うことができる。そのため、子が父からの愛情、監護、教育を受けられずに不利益を被ったとしても、相手女性の行為と、その不利益との間には相当因果関係はないというのがその主な理由です。

「相当因果関係」というのは難しい法律用語ですが、簡単にいうと、社会通念上、ある行為からその結果が発生するのが通常だといえるような関係という意味です。

最高裁は、相手女性が父と不貞し、同棲をはじめるという「行為」から、父が子に愛情を注がなくなるという「結果」が生じることは社会通念上、通常とはいえないと判断したわけです。

●「請求が認められるハードルは相当高いといわざるを得ない」

ーー原則として、子どもからの慰謝料請求はできない、ということでしょうか

法律的には子どもの不貞相手に対する請求が認められるハードルは相当高いといわざるを得ないのが現実です。

しかし、最高裁の判断は、子どもの不貞相手に対する請求は、すべて認められないとしているものではありません。

主張を認めてもらうためには、単に「父」が、不貞相手と不貞関係にあるというだけではなく、相手女性が、父の子に対する監護を害意をもって積極的に妨害しているといったような「特段の事情」まで主張立証する必要があるということになります。

なお、最高裁は、不貞されたのが夫であった事案での子どもから不貞相手(母の不倫相手)に対する請求についても同趣旨の判断をしています。不貞をしたのが夫と妻のどちらであれ、結論に違いはないと思われます。

ちなみに、子どもが損害賠償を請求するためには、相談者だけではなく、その子どもも原 告となる必要があります。

その場合、当初から、相談者と子どもが一緒に請求することもできますし、別々の手続で請求をすることもできます。なお、相談者の訴訟の進行状況等にもよりますが、別々に請求をしたとしても、併合審理となる場合も多いのではないかと思います。

【取材協力弁護士】
岡本 陽平(おかもと・ようへい)弁護士
弁護士になる前は、裁判官として、一般民事、家事事件等を取扱っていたほか、東京地裁商事部、保全部などの専門部での勤務経験も有する。また、カンボジア王国で、法整備支援プロジェクトにも従事したこともある。
事務所名:岡本陽平法律事務所
事務所URL:https://ok-lawfirm.com/