未払いの養育費について強制執行しようか迷っているという相談が、弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者の女性は、公正証書を作成して離婚しましたが、元夫は養育費の減額を求めて調停を起こしました。それからというもの、養育費は公正証書で取り決めた4分の1ほどしか振り込まれていません。

女性は「普段から嘘ばかりの夫でしたが、公正証書を作成したのに、約束を破られるとは思いもよらなかった」と悲痛な叫びをあげています。

そこで、女性は未払いの養育費について、相手の給料や預貯金を差し押さえる「強制執行」を申し立てるか悩んでいます。強制執行をした場合、女性側に不利益があるのでしょうか。染川智子弁護士に聞きました。

●強制執行でできること

——強制執行でなにができるのでしょうか。

強制執行をする場合、(1)相手の給与、(2)相手の銀行口座、(3)相手の不動産、などを差し押さえることが考えられます。

(2)の相手の銀行口座を差し押さえる場合は、相手の口座から直接お金をもらうことになりますが、もし、残高が少なければ、お金をもらうことができないでしょう。相手の口座情報がわからない場合でも、金融機関に問い合わせて口座を探し出すことが可能です。

(3)の相手の不動産を差し押さえる場合は、財産開示の手続きなどで裁判所に払うお金も大きい額になりますので、よほど高額の滞納があるという場合を除いては、あまりお勧めできないように思われます。

●相手の退職リスクは?

——相手の給与を差し押さえる場合、相手が退職するというリスクがありませんか?

その点が気にかかる方も多くおられると思います。給与差押では、裁判所からの通知が相手の自宅宛よりも先に相手の勤務先に送られますし、勤務先の一部に事情が伝わるため、会社に居づらくなることも考えられます。また、転職すれば給与を満額もらえるため、転職したいと考えるかもしれません。

このような場合は、相手がどれだけ勤務先に勤めていたいと考えているかによって、異なると思われます。勤務先の条件や環境が良く、給与差押があっても継続して勤務したいと思うようであれば、転職しないでしょうし、もともと勤務先を良く思っていない場合であれば、給与差押をきっかけにして、転職する場合もあるかと思われます。

実際に、私がご依頼を受けた案件では、給与差押のあと、勤務を継続される方も、転職される方も、両方いました。ですので、ケースバイケースのように思われます。

しかしながら、2020年4月1日に施行された改正民事執行法により、第三者からの情報取得手続きが新設されました。これにより、相手が転職した場合でも、新しい勤務先の情報を市町村または厚生年金を扱う団体から取得できるようになりました。

ですので、相手がたとえ転職しても、転職先に新たに給与差押をすることも考えられますから、転職されることを恐れずに、給与差押をすることも、ひとつの考えだと思われます。

今回のケースのように、養育費の減額調停が既に始まっているようでしたら、調停の資料をもとに、妥当な養育費の金額をあらかじめ算定の上、強制執行した方が良いかどうかの検討が必要になってくると思われます。まずは、弁護士にご相談いただければと思います。

【取材協力弁護士】
染川 智子(そめかわ・さとこ)弁護士
あわざ総合法律事務所(大阪弁護士会)弁護士。
家族にかかわる問題(離婚・相続・少年事件など)を多く取扱う。わかりやすい気さくな説明を心がけ、より満足感の高い解決に重点を置く。駅徒歩0分・カフェスタイルで、男女問わず気軽に利用できる雰囲気を大切にしている。
事務所名:あわざ総合法律事務所
事務所URL:http://awaza-law.jp/