不貞行為がなければ、浮気は違法とならないのか——。妻の裏切り行為に納得のいかない男性が弁護士ドットコムに相談を寄せました。

男性はある日、たまたま男女2人が道端で抱き合ってキスをしているところを目撃しました。しばらく様子を見ていると、なんとその女性は自分の妻でした。

実は、妻は同窓会で再会した同級生と5年にわたって逢瀬を重ねていました。しかし、同級生側は「不貞行為はない」との一点張り。男性は慰謝料請求調停や訴訟も起こしましたが、訴えは棄却されてしまいました。

結婚して25年になる男性は「既婚者と知りつつ男女が密会してキスをしているのは違法性がないのか。逃げ得なのか」とショックを隠しきれないでいます。果たして、男性は泣き寝入りするしかないのでしょうか。森元みのり弁護士に聞きました。

●明確な線引きがあるわけではない

——男性は慰謝料を請求したものの、訴訟で棄却されてしまったそうです。キスだけではダメなのでしょうか。

残念ながら証拠が不十分だったのかもしれませんが、肉体関係ならアウト、キスならセーフ、という明確な線引きがあるわけではありません。

肉体関係までは立証できない事案でも、不貞に準ずる行為があったとして、慰謝料が認められるケースもあります。

というのも、肉体関係があったことまで明確に立証できる事案は必ずしも多くありません。現場の写真や動画を発見した場合は別として、ほとんどの場合、ホテルや住居に入って数時間出てこなかったという調査報告書、ホテル等の領収書、メールやSNSのやり取りなど、間接的な証拠から不貞関係を推認することになります。

間接的な証拠と当事者の陳述を総合評価した結果、不貞があったと判断される事案もあれば、不貞行為があったとまでは断定できないものの、不貞に準ずる行為、つまり友人といえる範囲を超えた親密な関係にあることを窺わせる行為があったと認められる事案もあります。

不貞に準ずる行為でも、それによって婚姻の平穏を害したと認められれば、慰謝料の対象となり得ます。

●不貞と同じくらいの慰謝料額を認める例も

——その場合、慰謝料の金額はどのくらいになるのでしょうか

慰謝料額も、不貞行為とまで認められれば高額、不貞に準ずる行為との認定にとどまれば低額、というわけでもありません。

婚姻関係がどのくらい円満だったかに加え、不貞または不貞に準ずる行為の態様、期間、発覚後の対応など、諸事情が総合考慮されますが、不貞に準ずる行為であっても行為当事者の不誠実さなどを厳しく見て、不貞と同じくらいの慰謝料額を認める例もあります。

——金額は一律ではないのですね

一方、逆に言えば、不貞または不貞に準ずる行為の立証はある程度できていたとしても、当時の婚姻関係の状態やその状態に至った経緯、その行為の程度や経緯、不倫相手側が既婚者であると知っていたかどうかなど、様々な要素が考慮された結果、慰謝料が認められなかったり極めて低額にとどまったりすることもありえます。

最終的には、裁判官の価値観等によって判断が異なる面も否めませんので、第一審の結論に納得できない場合は控訴審で争うことも選択肢となります。

その際は、キスだけならセーフというわけではないことを前提に、当時の婚姻関係の状態、不貞又は不貞に準ずる行為の態様、行為発覚後の当事者の対応、行為による被害の具体的な程度などを丁寧に主張立証することになるでしょう。

【取材協力弁護士】
森元 みのり(もりもと・みのり)弁護士
東京大学法学部卒業。2006年、弁護士登録、森法律事務所入所。
著書・監修書に、『簡易算定表だけでは解決できない養育費・婚姻費用算定事例集』(新日本法規)『2分の1ルールだけでは解決できない財産分与額算定・処理事例集(新日本法規 )他。
事務所名:森法律事務所
事務所URL:http://www.mori-law-office.com/