「世界で最も長く収監されている死刑囚」としてギネスブックにも掲載された袴田事件。長年にわたる再審請求が実り、3月下旬、再審開始の決定が出た。さらに静岡地裁による「異例の判断」で、死刑囚として収監されていた袴田巌さんは、無罪判決をまたずに釈放された。48年ぶりに自由の身となったのだ。

今回の再審開始について、駐日英国大使館はツイッターで、「司法が万能ではないこと、そして日本が死刑を廃止する必要性を示しています」という見解を表明した(http://www.bengo4.com/topics/1341/)。この英国大使館の見解のように、袴田事件の問題をふまえて、「死刑制度」の是非を問い直すべきだという指摘が出ている。

英国をはじめとするヨーロッパでは、死刑がない国が増えており、「日本も死刑制度を廃止すべきだ」という声がある。その一方で、「死刑制度は存置すべきだ」という意見も根強い。では、刑事事件に弁護人として関わることがある弁護士たちは、死刑制度についてどのように考えているのだろうか。弁護士ドットコムに登録している弁護士たちに聞いてみた。

●回答した弁護士の7割が「死刑は廃止すべき」

弁護士ドットコムでは、死刑制度を存置すべきか、廃止すべきかを弁護士にたずね、以下の3つの選択肢から回答を選んでもらった。31人の弁護士から回答が寄せられ、<死刑制度は廃止すべき>とする意見が最も多かった。

(1)死刑制度は存置すべき →8人

(2)死刑制度は廃止すべき →20人

(3)どちらでもない →3人

このように、回答した弁護士の7割にあたる20人が<死刑制度は廃止すべき>と答えた。次のような意見が見られた。

「実際に刑事弁護に関わるようになってからは、死刑制度は廃止すべきだと考えています。弁護側立証を、みごとなまでの屁理屈で退ける刑事判決の積み重ねを見ると、日本における冤罪は、大小様々に多数存在していることは想像に難くありません」(磯野真弁護士)

「『民意』『多数意見』を尊重すべきことは確かですが、多数決によって奪うことのできない『人権』を守るという観点も必要だと思います」(巨瀬慧人弁護士)

「『死刑』は、憲法36条が絶対的に禁止している『残虐な刑罰』に該当し、廃止すべきである。刑罰には、かつて、腕を切り落とす、足を切り落とすといった身体に損傷を与える『身体刑』があったが、これは『残虐な刑罰』として克服された。『死刑』は、身体に損傷を与え、その結果として生命を剥奪するものであるから、究極の『身体刑』である」(萩原猛弁護士)

●20%が「死刑制度は存置すべき」

一方で、31人中8人の弁護士が<死刑は存置すべき>と答えた。次のような意見がみられた。

「現時点では、基本的には民意に従い、刑は維持すればよいでしょう(民意に変動があれば廃止でよいでしょう)。裁判員制度なども、結局は法律家と民意がかけ離れていたからこそおかれた制度です。少なくとも法律家は、民意とかけ離れた狭い世界にとらわれないようにないように十分に配慮する姿勢は忘れてはならない気がします」(岡田晃朝弁護士)

また、「どちらともいえない」と回答した弁護士は5人だった。存置すべきとも廃止すべきとも言い切れない悩みが現れた意見があった。次のようなものだ。

「愛する人が無惨に殺されれば、犯人には死刑になってほしいと考えるところですので、心情的には存置派です。他方で、刑事裁判の『有罪ありき』の姿勢や冤罪の恐れを理由にした廃止意見も、弁護士としては大きく肯けます」(河内良弁護士)

政府が2009年に実施した世論調査では、86%が「場合によっては死刑もやむを得ない」と答えており、国民全体のなかでは、「死刑制度を存置すべき」という声が強いのが現状だ。今回の弁護士に対するアンケートの結果は、そのような状況と異なるものといえる。

たしかに、自分の大切な人を無惨に殺されたりすれば、犯人に死刑を望むのは心情的に当然のことだろう。しかし、袴田事件が示唆するように、冤罪によって、無実の人が死刑になってしまう可能性は否定できない。

死刑という「究極な刑罰」が本当に必要なのか。このテーマは、何度も繰り返し、問い直されるべきではないだろうか。

(弁護士ドットコム トピックス)