不倫関係の清算には痛みがともなうものです。弁護士ドットコムには「不倫の慰謝料による自己破産」についての相談が寄せられました。

相談者の女性は、不貞行為をしたことが理由で、不倫相手の妻から700万円もの慰謝料請求調停を起こされました。女性は現在無職でうつ病を患っており、調停に出廷することは難しいと言います。

そこで「相手方には申し訳無いのですが自己破産を行う予定」と話しています。他に借金などはないそうですが、自己破産した場合、慰謝料は免責されるのでしょうか。和賀弘恵弁護士に聞きました。

●慰謝料額が決まらないと破産の対象にはできない

——相談者の女性は、不倫相手の妻から700万円の慰謝料を請求される調停を起こされています。

調停とはあくまで裁判所で行う話し合いであって、その申立をされている段階では、不貞行為の根拠たる証拠がどうなっているのか、また不貞行為が認められるとしても慰謝料の額はいくらなのか、全く分からない状況です。

このような慰謝料の根拠(不貞行為の存在)も不明確で、その債務額も不定の段階では、破産の対象とはできません。破産の対象たる債務は明確に定まっている必要があります。

——700万円という慰謝料額についてはどうでしょうか。

また、700万円という慰謝料の請求額も、通常の相場からしたらかなり高額であり、そのまま相手の言い分どおりの700万円を破産の対象の債務とすることはできません。まずは、調停についても弁護士を付けて適切に対応すべきです。

●慰謝料が免責されるのはどんなケース?

——慰謝料の金額が決まり、自己破産の手続きをした場合、免責されるのでしょうか。

破産法253条1項の「非免責債権」に該当すると慰謝料は免責されません。

非免責債権というのは「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」(破産法253条1項2号)とされていますので、今回のケースの場合不倫行為がこれに当たるかどうかの問題になるでしょう。

——「悪意」とはどんなことをいうのでしょうか。

東京地裁判決では、「そこでいう『悪意』とは故意を超えた積極的な害意をいうものと解するのが相当である」と判断しています。

「故意」といって、不倫相手の妻を害するであろうということを分かっていただけではなく、もっと積極的に不倫相手の妻を傷つけてやろう、家庭を壊してやろうなどという害意があったことが必要ということです。

通常の不倫では、害意までは認定されないだろうと思われます。そのため、慰謝料はほとんどの場合、免責されるということになるでしょう。

自己破産した後にさらに不倫相手の妻が慰謝料を請求するのは自由です。しかし、相談者は「自己破産手続きですでに免責されている債権である」と反論すれば大丈夫です。

【取材協力弁護士】
和賀 弘恵(わが・ひろえ)弁護士
大手食品メーカー、行政職員の経験を経て、目の前のただ1人の人を救う仕事をしたいと思い、弁護士を目指しました。現在は、的確な法的解決のご提案に加えて、カウンセリング機能も果たせる弁護士を目指して奮闘中です。
事務所名:みつ葉法律事務所
事務所URL:http://www.mitsuba-law.net