今年3月に名古屋入管でスリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさんが亡くなった事件をめぐり、国賠訴訟をすすめる手続きで、施設内の様子をおさめた監視カメラ映像を確認した遺族とその代理人が10月5日、都内で記者会見を開いた。遺族の代理人は「あまりに多くのことが最終報告書に書かれてない」と指摘した。

●ウィシュマさんの映像は公開されていない

ウィシュマさんは3月6日、名古屋入管の施設内で亡くなった。1月中旬から体調不良を訴えていたが、適切な治療を受けらなかった。亡くなる数日前から、食事もとれず、歩けなくなるほど衰弱していたとされる。

法務省・出入国在留管理庁は8月10日、名古屋入管の対応を検証した最終報告書を公表した。入管の体制について一部責任を認めたうえで、(1)職員の意識改革、(2)医療的対応をおこなうための組織体制の改革、(3)医療体制の強化などの改善案もまとめた。

一方で、施設内の監視カメラの映像は、8月12日に遺族(と通訳)に開示されたが、代理人の同席は認められなかった。そのため、その映像を公開するよう求める声が、支援者などの間で高まっていた。

●「証拠保全の申立て」という手続きをとった

遺族の代理人をつとめる児玉晃一弁護士によると、遺族側は国家賠償請求訴訟の準備をすすめており、それに先立つかたちで、今回、証拠の隠蔽や改ざんを防ぐ「証拠保全の申立て」という手続きをとった。

遺族側は今年7月19日、名古屋地裁に証拠保全の申立てをおこなった。9月6日、証拠保全の決定が出たことから、ウィシュマさんの妹、ポールニマさんは10月1日、代理人が同席する中で、監視カメラの映像を視聴した。

映像は、ぜんぶで295時間もあり、そのすべてを確認することは現実的でないため、代理人が一部の箇所(98分程度)を指定して、休憩をはさみながら、とぎれとぎれに2時間30分くらいかけて視聴したという。

画像タイトル

●最終報告書には「食べた」とした書かれていない場面

ポールニマさんと代理人たちが見た映像は、ウィシュマさんが亡くなる前の2月22日、26日、3月2日〜6日までの一部の場面だ。その中でも、駒井知会弁護士の印象に残っているのは、3月3日の夕方、入管職員がウィシュマさんに食事をとらせる場面だという。

「職員がスプーンで口に食べ物をもっていくと、(ウィシュマさんが)なんとか口をあけて、食べ物を口に含むんですが、用意したあった青いバケツの中に吐いてしまう。ところが、職員はほとんど間をおかずに、布のようなもので口を拭わせて、『はい、次』とスプーンで食べ物をもってきて、(ウィシュマさんは)また吐いてしまう。

自分がこんな目にあったら、どういう気持ちになるか。食べて、吐いて、うがいをすることもなく、また口の中に入れられる。経口摂取することが、ほとんどむずかしいだろうということは素人目にもあきらかで、極めて残酷だと思いました」(駒井弁護士)

ところが、入管庁によると最終報告書では、この場面は触れられていない。

「最終報告書からはまったく読み取れない、書かれていないことが、映像からどんどんわかっていく。なぜ、これまで入管が映像をみせようとしなかったのか。その理由がよくわかりました。最終報告書からは真実が、事実が見えてこないことがわかりました」(駒井弁護士)

画像タイトル

●代理人「ビデオを見せたくないのは、真実が映っているから」

ポールニマさんは「救急車を呼んでいたら、姉は助かったと思いました。最終報告書に書かれていないことがすごくあると確信しました。ビデオの内容と最終報告書と違っています。ビデオの全面開示をもとめます」と話した。

代理人の指宿昭一弁護士は「遺族のために一日でも早く、すべてのデータをわたしてほしい。これを引き伸ばす理由はない。国会議員に対してもちゃんと見せるべきだ。ビデオを見せたくないのは、真実が映っているからだ」とうったえていた。