長崎市の神社の男性宮司(70代)がセクハラをしたとして、神社の役員たちが宮司の辞職を求めていると長崎県内の各メディアが報じている。

長崎文化放送(10月5日)などによれば、神社内の個室で宮司が20代女性に対して「チューば」と唇を突き出し、女性のマスクを外そうとするなどしたという。「チューば」とは、地元では「キスを(しよう)」というニュアンスのようだ。

被害者は会見で、「チューば」発言以外にも、日常的なセクハラが数年来続いていたと主張している。一方の宮司側は当初、神社側の聞き取りに行為があったことを認めながらも、セクハラに該当するとの認識はなかったと弁明したようだ。

また、宮司の発言については「あ、元気たい、これやったらキスでもできるたい」と女性の体調を気遣ったものだと、神社の顧問弁護士が述べたと報じられている。

一般論として、キスをするために「チューば」と唇を突き出し、女性のマスクをとろうとする行為は、セクハラに該当するのだろうか。濵門俊也弁護士に聞いた。

●「チューば」はセクハラか

――キスをするために「チューば」と唇を突き出し、女性のマスクをとろうとする行為は、セクハラに該当するのでしょうか。

セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)とは、行為者の性的発言や行動により、対象者に不利益または不快を与えることです。この定義に照らしますと、上記の行為があったならば、セクハラに該当する可能性は十分あります。

もちろん、宮司側はセクハラの認識はなかった(故意はない)と主張するでしょうし、故意がなかったとしても過失にとどまるといった反論をすることが予想されます。

この点に関し、セクハラの成立と故意・過失等の主観的要件との関係について、東京高裁(令和元年6月26日)は次のとおり判示しています。

「ここで重要なことは、セクシュアル・ハラスメントに該当するというためには、対象者が不利益を受け、又は性的不快感を受けることは必要であるが、不利益を受け、又は性的不快感を受けることを行為者が意図したこと又はこの点について行為者に過失があることは不要であることである」

この東京高裁の基準によりますと、セクハラかどうかの認定には、行為者の主観は関係ないことになるのです。

なお、実際に、マスクをむりやり外し、キスをしていた場合には、強制わいせつ罪(刑法176条)に該当する可能性があります。

――また、報道によれば、この件以外にもセクハラ疑惑があったといいます。損害賠償請求や神社宮司の職を解任、降格されても違法とはされないでしょうか

セクハラ行為の認定に行為者の主観が関係ないとしても、不法行為に当たるとした場合、行為者の故意または過失が要件となります。不法行為に当たれば損害賠償請求できます。

神社宮司(役職)の職を解任、降格できるかどうかは、多くの裁判例をみますと、そのセクハラ行為が、懲戒解雇・諭旨解雇に相当する行為であるかどうかにかかってくると思います。

当然その判断(主張立証責任)は、神社側(会社側)にありますので、処分を下す際は、訴訟も見据えて慎重な判断を迫られます。

なお、前述の東京高裁判決は、懲戒処分をするかどうか、処分をする場合にどのような処分をするかに関して、処分する側の裁量権の逸脱・濫用があるかどうかを判断する場合については、行為者の主観(故意や過失など)を考慮するとしています。

【取材協力弁護士】
濵門 俊也(はまかど・としや)弁護士
当職は、当たり前のことを当たり前のように処理できる基本に忠実な力、すなわち「基本力(きほんちから)」こそ、法曹に求められる最も重要な力だと考えている。依頼者の「義」にお応えしたい。
事務所名:東京新生法律事務所
事務所URL:http://www.hamakado-law.jp/