配偶者に不倫が発覚しても、離婚や別居を選ばず、再構築を試みるカップルは珍しくありません。しかし、何事もなかったことにはできないもの。過去の不倫は様々なかたちで禍根を残すようです。

弁護士ドットコムに相談を寄せた女性の場合、「バレてから数年間、常に監視されるようになり嫌気がさしている」といいます。この相談者が不倫をし、夫にバレたのは数年前のこと。相談者は離婚を希望したものの、夫は拒否しました。そして、以来ずっと「車に盗聴器、鞄にGPS、家に小型カメラを付けられています」といいます。

相談者は気づかないフリをしていますが「やましいことは無いにしても、あまりにプライバシーがない生活に、嫌気がさしております」と言います。

夫婦間とはいえ、このような監視に法的な問題はないのでしょうか。澤藤亮介弁護士に聞きました。

●「プライバシー権侵害」となる可能性も

――法的な問題は?

夫婦間でも、盗聴器などを用い、過度な監視行為を継続する場合、プライバシー権侵害等の 不法行為を構成する可能性はあります。

しかし、生活を共にし、プライバシーも一定程度共有することが前提とも言える夫婦間の場合、赤の他人に対して同様の行為を行う場合と比べ、不法行為と認められなかったり、認められても慰謝料額が低額に抑えられたりすることは否めません。

今回のケースでも、夫の行為は大いに問題あります。しかし不法行為は成立しないか、しても低額な慰謝料に抑えられるでしょう。

妻側にはその前に不倫をしたという落ち度があること、妻側が気付きつつも夫に対して明確に異議を述べていない様子であること、離婚を前提とした別居状態ではないこと(逆に、夫婦間で明確な対立関係がある状態でこれらの行為をすれば、不法行為となる可能性が高いでしょう)などの事情があるためです。

●ポイントは妻が「有責配偶者」と判断されるか否か

――この状況で相談者(妻)が離婚を望んだ場合、相談者にとって不利な事情はありますか

裁判所が相談者を「有責配偶者」(離婚原因を作った側)と認定するかどうかでしょう。

離婚訴訟では、離婚を望むのが有責配偶者か否かが検討されます。というのも、離婚を請求している側(通常は原告)が有責配偶者と裁判所に認定された場合、離婚が認められる要件のハードルが高くなるからです。

離婚裁判の前に行う離婚調停では、「相手は有責配偶者である」と主張が双方から出るケースでも、裁判所が有責性を認定することまではしません。

そのため、離婚することやその他の離婚条件(財産分与、慰謝料等)で合意に達するようであれば、双方の有責配偶者性を明確にする必要なく調停離婚の成立に至ります。

しかし調停で合意できず訴訟に至った場合、原告となる相談者側が有責配偶者と判断されれば、離婚が認められるためのハードルが高くなり、一般的には、有責性がない場合と比べより長期の別居期間などの厳しい要件が求められることとなります。

離婚訴訟における裁判所の離婚事由についての判断の傾向としては、それまでの事実経過等を踏まえ「総合的に」判断という点がポイントと言えるでしょう。

●不貞の事実はあるが…

――今回のケースでは、どのように判断されるでしょうか

今回のケースでは、確かに相談者側に不貞の事実があったかもしれません。

しかし発覚後、数年間にわたり夫婦として同居して生活を続けていること、その間、夫において報復的とも思える監視行為が長期間にわたり行われていること等の諸事情があります。

これらを踏まえ、総合的に見た場合、妻の有責配偶者性はある程度薄れているとともに、夫の長期的かつ過度な監視行為からすれば、既に夫婦としての実質が失われており、夫婦関係は既に破綻している、などとも考えられます。

その場合には、相談者側の離婚請求が認容される可能性もあり得ると思われます。

【取材協力弁護士】
澤藤 亮介(さわふじ・りょうすけ)弁護士
東京弁護士会所属。離婚、男女問題などを中心に取り扱う。自身がiPhoneなどのデバイスが好きなこともあり、ITをフル活用し業務の効率化を図っている。日経BP社『iPadで行こう!』などにも寄稿。
事務所名:東京キーウェスト法律事務所
事務所URL:https://www.keywest-law.com